渋谷区でひと際賑わう円山町に位置するライブハウス『Spotify O-WEST(以下、O-WEST)』は、2025年6月に音響機器の更新を行い、L-Acoustics K2を中心とするシステムを導入しました。

高い天井のメインフロアと2階席を有するO-WESTは、オールスタンディングで600人のキャパシティを誇ります。若手からベテランまで、ジャンルを問わず、「多様なアーティストがステップアップするためのライブハウス」(公式ホームページより引用)として、観客はもちろんアーティストからも慕われています。

これまで長年使用されてきたポイントソースのシステムから、L-Acoustics K2にグレードアップしたO-WESTの音響について、O-WESTの音響管理を担う株式会社ソニックの田中 雄輝氏にお話をうかがいました。

音響改修について

以前のメインスピーカーは古い製品であったため、故障した際に修理が難しくなるのではないかという懸念がずいぶん前からあり、新しいシステムへの更新が本格的に検討されました。

様々な機種が検討された結果、L-Acousticsが選ばれた理由を田中氏にうかがいました。

「一番の理由は、L-Acoustics製品の表現力の高いサウンドを重視したためです。また、海外から招致するアーティストの機材リスト(ライダー)にL-Acousticsが指定されています。これがあれば大丈夫だろうと思いました。」

また田中氏はご自身の体験も語ってくださいました。

「私は、国内外でオペレーターを勤めた経験の中で、L-Acousticsの音を何度も聴いてその良さを知っていました。海外ではL-Acousticsが導入されているライブハウスが多く、そこでも音の良さを感じていました。」

メインスピーカーについては、K3で検討されたこともあったとのことですが、幅広いタイプのアーティストに対応できるよう余裕のある仕様にしたいという考えに至り、最終的にメインにK2、サブウーファーにKS28が導入されました。

通常ラインアレイでフライングされるK2は、O-WESTの物理的な環境から、特注の金具を使い4/2対向でグランドスタックとして設置されました(設置施工は名古屋の株式会社エーアンドブイ社)。

とりわけメインフロア後方のオペレーションルームへ「フロアの環境となるべく同じ音」を届けるため慎重な角度調整が行われ、その結果、定席オペレーターはもちろん、外部のオペレーターからも「前よりも確実に音が聴こえる。以前より何倍も良い。」と高い評価を得ているとのことです。

2025年6月。施工中の貴重な写真と、特注のグランドスタック用金具

2階席の音質も向上

A15 Focus ×2(片側)

2階席に向けてA15 Focusが天井から吊るされました。A15 Focusは以前のスピーカーと同じ位置で、元々あった金具を一部流用するなどして設置されました。

以前のシステムでは様々な事情により、十分な音が客席の隅々まで届いていなかったとのことです。A15 Focusを導入してからは「2階席の音が本当に良くなった」という声を毎日聞くほど、大変良い評判をいただいているということです。

これらの更新は4日間という短い期間で実施されました。この4日間は、年間を通してほぼ毎日稼働しているO-Westとして、2024年からスケジュールを組み、ようやく確保した貴重な時間でした。

L-Acousticsへの更新後の評判について、田中氏は「毎日オペレーターの感想を記録している中で、以前と比較して良くなったという意見が圧倒的に多い」と語ってくださいました。

サブウーハーKS28と、インフィルのためのA10Wide ×1(片側)

以前のO-WESTは低域がおおよそ80Hzくらいまでしか出ていなかったとのことですが、KS28のサブウーファーで低域が拡張されたことで、以前よりも幅広いアーティストの表現のニーズに対応できるレンジが得られ、海外のアーティストも満足するライブハウスになったとのことです。

ステージ脇に設置された6台のLA12X

O-WESTからシーンのトップへ

田中氏に今回の改修について感想をうかがいました。

「今回の施工は、プランニングの段階から設置後の営業までの全てを見てきましたが、良い結果になると確信していましたし実際その通りになりました。乗り込みオペレーターの方々から満足の声をいただいた時はL-Acousticsにして良かったと強く感じます。また私自身も日々オペレートしていてこのサウンドに非常に満足しています。」

「O-WESTはフューチャーアーティストからキャリアアーティストまで幅広い世代の表現の場として根付いています。今回のシステムアップデートを経て更に新時代の表現にも対応できるようになりましたので、この先もより多くの方々にO-WESTのサウンドを体感しに来ていただきたいです。」

このように田中氏は最後にO-WESTの今後の展望で締めてくださいました。

流行のポップスから、生き残りをかけてシノギを削るアイドル、そして骨太のロックに荒々しいラウドミュージック…。まさに渋谷の街を象徴する様々なアーティストが、さらに上を目指していくための登竜門が、ここSpotify O-WESTであると言えるでしょう。L-Acoustics K2とKS28によって格段に音響レベルが上がったこのライブハウスから、シーンのトップへ羽ばたいていくアーティストがさらに多く生まれていくことでしょう。

株式会社ソニック 田中 雄輝氏

Spotify O-WEST
渋谷区円山町2-3 2F
https://shibuya-o.com/west/

施工
株式会社エーアンドブイ
https://aandv.co.jp/