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2020/01/28

オーディンとの会談で、SyvaはHrafnと共に注目を集める

Hiroyuki Tanabe
ブログ
森の中の遊歩道は訪問者をねぐらへ導きました。(Ⓒクリス・ワトソン)

2020年1月

Novatechは、Syvaによるイマーシブ・サウンドで今年のDark Mofo Festivalの参加者を幻想空間に導く

Project Xは、2018年から2019年の夏までの広範囲に及んだ破壊的な森林火災の後、タスマニア州ヒュオンバレーへ訪問者を増やすために企画された現代的の芸術作品、イベント、活性化のプログラムです。連邦政府と州政府の支援を受けているProject Xは、MONA美術館主催の冬至フェスティバル『Dark Mofo』のプロダクションチーム「DarkLab」によって提供されています。

音楽と芸術に係るこのフェスティバルは、オーストラリア南海岸沖のタスマニア州の孤島で毎年開催され、メージャーなミュージック・パフォーマンスや大規模なパブリックアート・イベントを行う、世界で最もユニークな冬のフェスティバルの1つです。2019年のDark Mofoで、DarkLabは有名な作曲家でサウンドレコーディストのクリス・ワトソンによる新しいイマーシブ型サウンド作品『Hrafn: Conversations with Odin』を発表しました。The Wired Labが共同で提供したこのセットは、Syvaコリニアソースをベースにした、L-Acoustics の空間化されたマルチ チャンネルの音響装置を採用しました。

タスマニア南部の古いユーカリの奥深い森で発表されるワトソンの作品は、夕暮れ時にねぐらに帰る約2,000羽のカラスの生態の記録を中心に表現されています。ワトソン氏は、冬の前に鳥が集まる晩秋に北ウェールズのアングルシーを訪れた時、このようなユニークなサウンド作品を作るためのインスピレーションが湧き出ました。カラスの巨大なねぐらが鳥が放つ音と鳴き声と共に森に降りてきました。ワトソン氏はこの経験に魅了されました。

「ワタリガラスが近付いてくるにつれ、空は暗くなっていき荘厳な景色になりました。」とワトソン氏は述べます。「ワタリガラスは鳥の中で最も知性が高いと思われます。問題を解決できるほど非常に賢いです。ワタリカラスは集団生活をしており、動物の鳴き声を調査する生物音響学者の研究で、ワタリガラスのコミュニケーション システムが明らかになりました。森での作業はマイクの周りに立ち入らないよう長いケーブルを使って遠くから見守ります。この機会に特別なサラウンドサウンドマイクを使い、それをねぐらの下に設置しました。一週間そこに置いて、鳥の生態を録音しました。」

翌春、ワトソン氏はアイスランドを訪れ、北欧神話に出るオーディン神はしばしば2羽の特別なワタリガラス、フギンとムニンを伴っていたことを知りました。オーディンはフギンとムニンはオーディンに世界で何が起こっているかを伝えるために空を飛びまり、戻ったら神の肩に座って、見たものと聞いたことを報告していました。神話がワタリガラスのねぐらでの経験と似ていたので、ワトソン氏は作品を『Hrafn:Conversations with Odin』にしました。(「Hrafn」は古ノルド語でワタリガラスを示します。)

地球の反対側であるタスマニア州南部は、古いの森林を破壊する恐ろしい火災によって荒廃し、訪問者が急激に減少しました。この地域の復興を支援するために、Dark Mofoフェスティバルのプロダクション・チームは、多くの訪問者を呼び戻すために、素晴らしい景色を観察できる、より魅惑的なプロジェクトに取り組みました。彼らの目標は森の中でイマーシブ型のサウンド体験をしてもらうことでした。そのためにクリス・ワトソン氏はプログラムに参加するよう誘われました。

Novatech Creative Event Technology (Novatech)は、Dark Mofoのイベント主催者、ルーク・ハッチンス氏とプロデューサーのサラ・ラスト氏とデビッド・バラストン氏は、以前プロジェクトで協力し、ワトソン氏の特異なアートワークに完璧なサポートを行う Syvaを使用しました。

 タスマニアの森の中で、Novatechは15台のL-Acoustics Syvaを15本の厳選された樹木から吊りました。
(Ⓒ DarkLab)

「このプロジェクトの注目すべき点は、Syvaが15本の厳選された樹木に吊られたことです。」と、Novatech Audio Systems 技術者のマイケル・ウィケンス氏は回想します。「15台のSyvaボックスは2つの輪を作るよう配置されました。高さ25m、内径15mで配置された4台のSyvaによる内輪と、内径25m、高さ15mで配置された11台のSyvaによる外輪で構成されました。このインスタレーションでは、すべてのスピーカーをリスニングエリアの中心から同じ地理的距離に配置することを意図しました。」

Syvaはキャビネットが持つ垂直指向性により選択されました。Novatechチームは、サウンドを、樹木の葉が覆いかぶさることによるエネルギー損失の無い、リスニングエリアに集中させることができました。見た目でも、Syvaのスリムな形状は周囲の環境に完全に溶け込みました。

特殊な設定に対処するために、このイマーシブ型インストールではL-Acoustics の Soundvisionソフトウェアが使用されました。ワトソン氏とDark Labは、計算結果と問題点異常を視覚的に確認し、設置前にプロジェクトを検討し修正することができました。Soundvisionは、Syvaを物理的に樹木にリギングしているので、樹木医の視覚的な判断材料としても使用されました。登ることができた最も高い樹木は40メートルで、その高さでの直径が20cmまで細くなる箇所がありました。ウィケンズ氏は、システムが最適なカバレッジを提供できるように、事前に角度を決めました。したがって、システムをリギングするために各樹木に一度登るだけで、調整を必要とせずスピーカーを完璧な位置に吊り下げることができたということです。

 すべてのスピーカーは高さ25mの内輪と、高さ15mの外輪で、リスニングエリアの中心から同じ地理的距離に配置されました。(Ⓒ DarkLab)

 Novatechチームは40mまである木々を登りました。(Ⓒ DarkLab)

「10年以上オーディオ業界で働いてきましたが、私はこれほどユニークな場所で作業したことがありませんでした。」とウィケンズ氏は述べます。「手つかずの森でのサウンド・インスタレーションに関わることは、とても心の安らぐ経験でした。」

「それは間違いなく作業現場というよりは森のハイキングでした。」と、Novatechシニアプロジェクトマネージャーを務めるナサニエル・コリンズ氏は同意を表します。「幸いにも、設置現場にまっすぐつながる道がありましたが、そこに機材を持ち込むために200m 押し進む必要がありました。」

大きな課題は、覆いかぶさる樹木の葉や幹が各SyvaのHFドライバを妨げないようにし、各キャビネット間の音の一貫性を確保することでした。心情として絶対に必要でない限り、完全にイコライゼーションを避けたいと思っていました。

運用上の観点からみると、厳しいタスマニアの冬は、時速50kmの風、冷たい激しい降雨、停電など、独特な問題点をもたらしました。L-Acoustics Network Managerを介してアデレード市からリモートでコントロールラックにログインできたおかげで、トラブルシューティングプロセスが非常に簡単になりました。Novatechチームは、公園管理者から荒天になったときにその情報を受け、タスマニアのコンピューターにログオンして簡単なテストを実行できました。

 森の天蓋に溶け込むよう、Syvaはカムフラージュを施されました。(Ⓒ DarkLab)

「L-Acoustics Network ManagerのLoad Sensor Calibrationツールは、アレイ内の各キャビネットのHFとLFドライバをチェックするに非常に便利でした。」とウィケンズ氏は説明します。「どんなに厳しい天候でも、すべてのSyvaボックスは完璧に機能していることに驚きました。さらに、テストシーケンスを実行して、ワタリガラスの録音を再生するソフトウェアが正しく設定されていることを確認することもできました。

「インストール時で面白かったのは、キャリブレーションプロセスの途中にありました。チームがSMAARTを使って各スピーカー間の時間ベースの距離を測定したとき、タスマニアの森に響いたピンク・ノイズに返答しているかのような、ことどりの不気味な鳴き声が響き、非常に特別な瞬間でした。

「これはワタリガラスのねぐらと同じくユニークな経験でした。」とワトソン氏は結論として語ります。「訪問者は、森の歴史、民間伝承、そしてワタリガラスの神話について説明するガイドとともに夕暮れ時に森に入りました。その後、切り開かれた場所に導かれ、そこに留まりました。空が暗くなったら、訪問者は頭上からイマーシブ型スピーカーシステムを通して2,000羽のワタリガラスの鳴き声を聴きました。真っ暗闇の中で、森の四方から聞こえて来る個々の鳥の会話を楽しみました。この作品は40分未満しか続きませんが、驚異的でした。」

クリス・ワトソンについて

クリス・ワトソン、イギリス人のフリーランスの作曲家でありレコーディングエンジニアです。その作品は、空間が持つ強い感覚と精神を感じさせるサウンドインスタレーションを専門とします。彼は、1970年代後半から1980年代初期にかけて、影響力のあるシェフィールド出身の実験音楽のバンド「キャバレー・ヴォルテール」の創設メンバーでした。それ以来、彼は世界中の野生生物の鳴き声やその生息地の音を録音することに特に情熱的な関心を抱いてきました。

彼のテレビ作品には、1996年に「Best Factual Sound」のカテゴリでBAFTA賞を受賞した『The Life of Birds』を含むデイビッド・アッテンボローによる『Life』連続ドキュメンタリの多くの番組が含まれています。また、BBCの連続番組『Frozen Planet』のサウンド・レコ―ディストとして同じカテゴリで2012年BAFTA賞を受賞しました。

ワトソン氏は最近、『Salmo salar - The Three Realms』と呼ばれるオリジナルのサウンドアートコミッションでSerpentine Galleries とL-Acoustics Creationsと協力しました。同作品は、今年初めに、ロンドン、ハイゲートにあるL-Acoustics Creations本社で開催されたVIPイベントと、EartH Hackneyシアターでプレミアが行われました。

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