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2021/06/03

Women in Pro Audio ーー ヒヤシンス・ベルチャー氏のインタビュー

Hiroyuki Tanabe
ブログ
もし12歳のヒヤシンス・ベルチャーに、大人になってからプロオーディオの世界に入りたいかどうか尋ねたら、彼女の答えは「絶対に!」だったでしょう。

女性史月間として知られる3月は、女性とその功績を称えるための期間です。しかし、L-Acousticsはこの月を利用して、1ヶ月だけではなく、女性を祝福するシリーズを開始することにしました。L-Acoustics Women in Pro Audioシリーズは、プロオーディオ業界で活躍する多くの驚異的な女性たちの功績を讃えるものです。サウンドミキサー、エンジニア、オーナーなど、この業界で活躍する多くの女性は、その革新性、才能、忍耐力でプロオーディオの分野を高めており、それが評価されるべきだと考えています。

今回のインタビューでは、OnstageSystemsの社長であるヒヤシンス・ベルチャー(Hyacinth Belcher)さんにお話を伺いました。

Onstage Systemsは、テキサス州ダラスに本社を置き、様々な成功を収めたイベントに、幅広いAVサービスとレンタル機器を提供し、数々の賞を受賞しているオーディオ・ビジュアル企業です。彼らはAVソリューションを用いて、規模の大小を問わず、複雑なイベント制作の課題を解決しています。ゲストに感動を与え、後世に語り継がれるようなイベントを実現したいなら、全米でも数少ない女性の制作会社オーナーであるヒヤシンスさんに相談してみてはいかがでしょうか。

子供の頃から音楽に囲まれてきたヒヤシンスさんは12歳でドラムを叩いていました。「ドラムスティックを手に取った瞬間、音楽業界が好きになりました。」と彼女は説明します。「レーター・ダラス・ユース・オーケストラに参加したり、高校のマーチングバンドで女性初のスネアドラム奏者に選ばれたりしました。大学在学中は、地元のバンドでドラムを演奏しながら、家族が経営する制作会社で電話番として働いていました。そこから、照明と舞台の仕事に移りました。大学卒業後も仕事を続け、その過程で素晴らしいオーディオを聴く耳を養いました。」 ヒヤシンスさんは「1994年以来、茶色の箱1を愛してきました。」と加えておどけて見せます
1-L-Acousticsのキャビネットのことを、茶色と表現する人がいます。


ヒヤシンスさんは大学卒業後約10年でOnstage Systemsを買収しましたが、その間ずっと、彼女のビジネスへの情熱は衰えることはありませんでした。「私はイベントが、トラックからたくさんのケースが出てくる混沌とした状態から、秩序だってうまく設置された状態に至るまでの道のり、そこに至るまでの努力、そして何よりも最終結果が好きなのです。」と述べます。「そして、人々が音楽で癒され、人生を謳歌する手助けをするのが好きです。」

この25年間、AVビジネスを運営してきた中で、様々な面白いエピソードがありました。そのほとんどが、予測不可能な天候と絡み合っています。「『ヒューストンで熱帯低気圧が発生した? そうだ、今すぐ撤収しよう!』 どこからともなく湿地帯が現れ、私のサブウーハーは30センチの水に浮いていました!それはもう、最悪の一日でした。その後も2日間雨が降り続き、湿地帯は増え続けました。私たちは最善を尽くして、サブウーハーを水から引き上げ、6日後には3ステージ分のフェスティバルギアを取り出すことができました。そんな日を誰もが経験したことがあるでしょう。私が言えることは、できるだけみんなと一生懸命頑張ると言うことだけです」。

これまでに担当したショーの中でお気に入りのものを聞いてみると、「何年か前にダラスで行われた最後のOzzfestです。初めてL-Acousticsのサブウーハーを、巨大なPA(Pre K1)と一緒に吊ることができました。メタリカがステージに上がり、PAの轟音が聞こえた瞬間、私たちがこの場にいたことをとても嬉しく、誇りに思いました。また、パンデミックの直前に行われたジョージ・ストレイトとの10万人以上の大規模スタジアムでのツアーも、素敵でした。」と述べています。 

どの業界にでも、その特有の課題や障害があります。そして、女性もその例外ではありません。どちらかといえば、どんな分野でも女性には独自のチャレンジが加わります。Onstage Systemsの女性オーナーであることは、特に設立当初は、ヒヤシンスにとってハードルが高かったそうです。現在パートナーである兄と一緒に、家業を買収し、ひとつの価値観を持った老舗企業を、新しいリーダーと価値観のもとに生まれ変わらせることは、困難なことでした。「業界内で動き出そうとすると、壁にぶつかったり、見過ごされていると感じたこともありました。経営者ばかりの部屋では、私は年下で唯一の女性であり、それが辛かったこともあります。また、私はどちらかというと内向的な性格なので、ネットワークを作るのも大変です。しかし、そんな中でも、私は3年の間に自分の仲間を見つける方法を学びました。

「制作会社を経営する上で、雇用している人や一緒に仕事をしている人の90~95%は、私の知識や技術、そしてビジョンを尊重してくれています。女性経営者としての課題は常に抱えていますが、私の行動、仕事に対する倫理観、ビジョンがあれば十分だと思っています。私は、残りの5~10%の人に悩まされることができません。私は前に進み続けなければならないのです。」

また、この業界について何かひとつ変えられるとしたら、「私たちが州や連邦の議会や政府の指導者に対して発言権を持つことです。私たちは今、それに取り組んでいます。」 これは、正しい方向への素晴らしい一歩に違いありません。

この業界に入りたいと思っている女性たちへのアドバイスは?

「『DO IT』です。自分自身、ビジョン、自分の方向性を信じること。あなたの好奇心を大切にし、あなたを指導したい人を見つけること。可能であればインターンシップをすると良いでしょう。そうすれば、物事がどのように機能するかを見て、その方法が自分に合っているかどうかを判断することができます。このビジネスに何を望んでいないかを知ることは、何を求めているかを知ることと同じくらい重要です。何事もそうですが、100%飛び込んで集中してください。」

そして、彼女のキャリアの中で最も誇りに思う瞬間は? ヒヤシンスさんは1つだけを選択できませんでした。むしろそれは、オーナーとしてのキャリア全体を総括するような、誇りの感覚でした。「ファミリービジネスを成長させることです。私たちの倉庫を見渡すと、何年も私たちを信じてくれた人たちの顔が浮かび、その人たちが今もここにいます。私は人を大切にします。ビジョンを現実に変え、その過程で楽しみながら一生懸命に働くこと。瞬間的なものではなく、全体の、美しい、長い旅です。」

なるほど。

「プロオーディオ業界の女性たち」シリーズに参加してくれたヒヤシンスさんに感謝する前に、重大な課題であるパンデミックとライブイベントの未来について話さなければなりませんでした。不安と恐怖に満ちた現在の社会情勢にもかかわらず、ヒヤシンスさんは希望であふれています。「イベントは最初は少しづつ戻り、その後は急速に回復していくと思います。多くの人々にとって、コンサートやフェスティバルに行ったり、お気に入りのアーティストのツアーを見に行ったりすることが、人生を取り戻すことだと考えています。音楽は癒しを与えてくれますし、多くの人々が今、その癒しを必要としています。」


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