「みんなの笑顔のために頑張っています。観客、アーティスト、同僚を問わず、その笑顔を見ることが、私にとってマジックなのです。作ったものの結果を実感できるのは、最高ですね。」―― サブリナ・スドホフ

ライブイベントやプロオーディオの裏側には、それを実現するために尽力するスタッフたちの輝かしい姿が存在し、語るべきことはたくさんあります。さらに、そのような努力を惜しまないクルーたちの中で、素晴らしい才能と進取の気性に富んだ女性たちが活躍していることも、特筆すべき点です。

サブリナのご紹介

今月は、『Women in Pro Audio』シリーズとして、著名なサブリナ・スドホフ(Sabrina Sudhoff)氏にお話を伺いました。ドイツのTDA Rentalでオーディオ部門の責任者、プロジェクトマネージャー、TDA Rentalの研修生のメイン講師として働くスドホフさんはさらに、(現在はDie Toten Hosenのボーカルの)モニターエンジニア、RFテック、クルーチーフ、モニターテックなど、たくさんの顔をもっています。また、パンデミック時にはLAC Labsと協力し、マイク消毒器「Li.LAC」の開発と普及に努めました。

スドホフさんは若い頃からプロの音響やライブイベントを目指していたわけではなく、キャリアのスタートは地元の小さなクラブで働き始めた時のハプニングでした。

「正直、技術系の仕事に就くとは思っていませんでした。」とスドホフさんは語ります。「もともと人と接する仕事がしたかったので、もっと成績が良ければセラピストになっていたかもしれません。でも、学校を卒業した時点では、自分が何をしたいのか、まったくわからない状態だったのです。この仕事に就いたきっかけは、友人から地元の文化センターで、舞台係のボランティアをしてみないかと誘われたことでした。まさかこれが、この仕事を好きになるなんて思ってもいませんでした。」

そんなスドホフさんが、偶然にTDA RentalのCEOであるスティーブ・トデスキーノ(Steve Todeskino)さんと出会うことになりました。「そして、インターンシップ後、TDAのイベントテクニシャンになるよう見習いをさせてもらいました。で、今ここにいるわけです!」

出会ったチャレンジ

男性の多い分野で女性が直面する困難に、幸運にもスドホフさんは巻き込まれずに済んだと語ります。「女性に対する偏見にさらされることもなく、恵まれた環境にいることに気づきました。知り合いの中で、自分が直面しそうな問題に対して、アドバイスをくれようとする人もいました。最初の実習生募集で『体力がない』と断られました。社長ともう一人の実習生しかおらず、私たちだけで体力を必要とする作業ができるかどうかを疑っていたようです。これ以外は、特に嫌な思いはしていませんね。」

しかし、性差別以外に、女性だけでなく一部の男性でも年齢差別を受ける人もいるかもしれません。「私はいつも実際よりも若く、弱々しく見られていました。自分の知識、経験、力を証明しなければならないことが多かったです。そして、その知識、経験、力を得るためのアドバイスは、人を観察し、話をよく聞くことです。あらゆる機会を捉えて学ぶこと。問題解決や目標達成のために、型破りな方法を用いることも恐れてはいけません。」

パラダイムを変える

「技術力が重視される小さなイベント会社でスタートしました。仕事量が増えても、組織力、先見性、コミュニケーション力など、ソフトスキルの重要性が認識されるまでには時間がかかりました。また、経験豊富なシステムエンジニアと、フェスで機材やスタッフを管理する私との給与格差を解消するにも時間がかかりました。これは女性ならではの課題かもしれません。女性はソフトスキルが得意とされ、多くの女性が簡単にできるので、その方向に押されてしまうことがあります。技術職に就く女性が少ないのも、そのような理由からかもしれません。

母なる自然

ショーの本番前に多くのスタッフが耐え抜いている様子は、いつも目にすることではありません。でも、よく言うじゃないですか、「ショーは続けなければならない」こと。スドホフさんは、よくぞ無事でいられたと思うような経験を語ってくれました。「何年か前、フェスティバルで、ライブは続けなければと思ったことがあります。だから、みんなで、溺れそうなほどの雷と土砂降りの雨の中、救えるものは救おうと夜のフェスティバルの会場に戻りました。翌日は、Midas XL3のフレームに穴を開けて水を流し、コンソールのチャンネルストリップをドライヤーで乾かし、アウトボード機材も天日干しすることになりました。そのおかげではパフォーマンスを行うことができました。しかし、今となっては、二度とこのようなことはしません。誰も被害を受けなかったのは幸運だったのです。」

彼女のやりがい

「みんなの笑顔のために頑張っています。観客、アーティスト、同僚を問わず、その笑顔を見ることが、私にとってマジックなのです。作ったものの結果を実感できるのは、最高ですね。私たちは毎朝、誰もいないホールに入り、1日かけてゼロから世界を作り上げるのです。それに、モニターのミキシングを担当したバンドのボーカルや、機材の準備をしたエンジニア、質問に答えてくれた研修生など、自分の仕事に感謝してくれる人がいれば、それは大きな喜びです。」

スドホフさんは、自分のキャリアの中で、笑顔を残した出来事を思い出します。「たまたま、ミスフィッツがヘッドライナーを務める小さなパンクロックフェスティバルでモニターミックスを担当したのですが、彼らのFOHエンジニアは、シンガーが快適に、ショーを楽しんでくれるかどうか、少し不安そうでした。しかし、すべてがうまくいき、ライブが終わってすぐに、そのシンガーがやってきて、汗だくで私にハグをして、何かを探しているような様子でした。一瞬の隙をついて、汗で濡れたリストウォーマーを外し、笑顔で「ありがとう」と言って渡してくれたのです。最高の気持ちでした!」

みんなへのアドバイス

「自分らしくいてください。性別やジェンダーは重要ではありません。助けが必要なら助けを求め、必要でないなら自分のことに気を配るように丁寧に伝えましょう。自己反省が鍵です。あなたが本来持っている能力は何ですか? どうすればそれらを最もよく活かすことができますか?」

「また、学び続けることも、最も重要なアドバイスのひとつです。」とスドホフさんは付け加えました。知識と経験は、あなたの最も貴重な財産です。そして最後に 自尊心です。自信を持ち、常に良い自己評価を保つことが大事です。」

ライブイベントの将来

スドホフさんは、今後のライブイベントの定期的な開催を希望しています。「近年は、みんなにとって、とても厳しかったと思います。プロフェッショナルとして、この業界が、教養と勤勉さを備えた人間のプロフェッショナルな業種であると見られるようになることを期待しています。また、この業界が少しずつ、女性が希望するあらゆる仕事で活躍できるようになりつつあることは喜ばしいことですが、私たち特有の課題や苦労を強調する必要はないのではないかとも感じています。私たちが最も尊敬を集めるのは、教養があり、プロフェッショナルで、知的で、親切であることであって、女性という代名詞を使うことではないと思っています。」

その通りですね。プロオーディオの世界で働くにあたって、性別を気にしたり、問題にしたりすべきではないという意見に同意します。ライブサウンドとプロオーディオというワイルドで充実した道を歩もうとするすべての人のために、道を切り開き、その道を確保し続けようではありませんか。