2018年7月

イマーシブ・ハイパーリアル・サウンドは、往年の名画のシネマ・コンサートでのイマーション感を深めます。

1988年 リュック・ベッソンの大ヒット映画『グラン・ブルー』の公開30周年を記念して、2つの素晴らしいシネマ・コンサートが催され、大勢の観客が集まりました。5月11日の初演は、カンヌ映画祭で映画のプレミア試写会30周年を迎え、6月2日には5,000席の会場であるSeine Musicaleで改めてたくさんの観客を集めました。この魅力的な曲は、フランスの作曲家Eric Serraと、このイベントのために選抜されたミュージシャンのグループによってライブ演奏されました。 L-AcousticsのL-ISAテクノロジーは、イマーシブ・ハイパーリアル・サウンドの体験を可能にしました。

ジャン=マルク・バール、ジャン・レノ、ロザンナ・アークエットが出演したこの壮大な長編映画は、2人の有名なフリー・ダイビング・チャンピオンのジャック・マイヨール(バール)とライバルとして競った、エンゾ・モリナーリ(レノ)の人生物語を基にした作品です。南フランス、ギリシャの諸島、ペルーやシチリアで撮影されたこの映画は、1989年にフランスの最高の栄誉であるセザール賞で作曲賞を受賞したSerra氏のサウンドトラックによって、美しい水中風景と、感情的な激しさが、より強調されています。

この特別な機会に、Serra氏は観客に素晴らしい体験をしてもらおうと思い、L-ISAテクノロジーのデモンストレーションを受けるため、ロンドンのL-ISA本社に L-Acousticsの創設者および社長であるChristian Heilを訪ねました。

「初めてL-ISAシステムを聴いたとき、『自分のレコーディング・スタジオは優れた機材を備えており、何度も音楽の本質を感じたことがありますが、この感覚は初めてです』とChristianさんに言いました。あの時、本当の意味で音楽の本質を感じたことが初めてだったことがわかりました」。目から鱗の落ちたその訪問の後、Serra氏はL-ISAイマーシブ・ハイパーリアル・サウンドが『グラン・ブルー』のシネマ・コンサートのビジョンを正しく伝える方法であると判断しました。erraは、長年のL‑Acousticsユーザーであるシステム・エンジニアのMaxime MenelecとFOHエンジニアのSébastien Barbatoの両方に、コンセプトの実現を手伝ってもらいました。

Menelec氏は、エンニオ・モリコーネの「60 Years of Music」ワールドツアーで、L-ISAテクノロジーを熟知していました。システム・エンジニアとして、L-ISAの完全なカバレッジと信号処理を確実にするためにFOHのSébastien Barbatoと共同で仕事をしました。「L-ISAは特に『グラン・ブルー』のようにイマーション感があふれる曲の演奏を本当に素晴らしいものにします」と、Menelec氏は言っています。

「L‑ISAは、基本のL/Rシステムと違って、より多くの音源を使用することからイマーション感を強化することができます。」と、L-ISAを初めて体験したBarbato氏は加えて述べました。「専用ソフトウェアとマトリックスの使用により、音源の位置をより簡単に決めて、会場のどこにでも、空間的広がりにイマーションな感覚を観客に与えることができます。」

L-ISA Focus(特許出願中)は、9台のK2による3つのハングと、12台のKaraによる2つのハングをフロントシステムとして構成されました。また、イマーション感を提供する9台のKaraによる2つのハングの拡張システムも使用されました。8台のKS28サブウーファーのセンター・ハングはローエンドを提供し、5台のKiva IIはステージリップにフロントフィルとして配置されました。システムは、2台のL-ISAコントローラによってドライブされ、L-ISAプロセッサを介して処理されました。L-Acousticsツーリング アプリケーションエンジニア Frédéric Baillyとツーリング アプリケーション ディレクター Florent Bernardは、SoundvisionのデザインとL-ISAミックスのサポートを行いました。イベントは、L-Acoustics認定プロバイダーのDUSHOW によって提供されたスピーカーを使用してGérard Drouot Productionsによってプロデュースされました。

最も重要な課題の1つは、インパクトのある映画と魅力的なコンサートの体験を提供し、それらが融合して、ミュージシャンが完全に自分自身を表現できるようにすることでした。Serra氏とBarbato氏が最初に出会ったとき、Serra氏は、ミックスが、オリジナル・サウンド・トラックに非常に近くなることを望んでいました。しかし、Barbato氏は、ライブコンサートに似たサウンドにすることを考えていました。「理性的で芸術的なアプローチだったので、Serra氏も賛成しました。」と、Barbato氏は言っています。「Serra氏に信用していただいて、良かったと思います。」

ミックスを作成する際、Barbato氏は、会話部のためのモノラルトラックから作業を行い、Dolby5.1サラウンドで映画のエフェクトと同様に、ミックスの真ん中に持ってきました。映画の5.1サウンドトラックは、LCRハングのフロントシステムとサブや2つの拡張ハングを介してチャンネルへ簡単にフィードされ、完全なイマーション効果を達成することができました。逆に、ステージからのすべての音楽の音源は、楽譜の各構成に従ったミックスの位置になっていました。

「リハーサルの最初の数日間は、ミュージシャンを入れず、映画だけを見ながらリハーサルを行いました。」と、Barbato氏は説明しています。「したがって、立体音像を造るために、映画だけを視覚的なガイドとして、音像の整合性を維持しながら分離や奥行に頼っていました。」

「L-ISAの使用が意味を持つようになったのは、現場でミュージシャンたちが本番の位置に立ったときでした。」と、Barbato氏は言いました。ミュージシャンの立ち位置に合わせていくつかの音源の位置を変え、音の創造性を維持しながら、観客を包み込むイマーション感を最大限に高めました。電子ドラムの構成を持つドラマー2人とキーボーディスとが2人いたこともあり、L-ISAで立体音像をうまく作ることができ、観客が、誰がどこで演奏をしているのかが、より自然に認識できるようになりました。」

「『グラン・ブルー』の信号フローは、電子楽器だけであったため、ちょっと変わっていました。 すべてがMIDIでコントロールされた音源が、MADIフォーマットでDiGiCo SD7コンソールに入力されました」と、Menelec氏は言っています。様々な構成に対応した合計140の入力が、96のL-ISA入力を介してルーティングされ、64の出力がL-ISAシステムに分配されました。「それでも、L-ISAシステムは、通常のL/Rシステムよりも配置が難しくありませんでした。粛々と必要な作業を行うだけでした。L-ISAの配置を非常にシンプルに扱うための必要な技術は習得しているのです。」

Menelec氏によると、L-ISAは、観客に対して限定されたエリアで一貫したカバレッジを提供し、クリエイティビティに制限がないというメリットがあるとのことです。「私たちを包み込む残響をソースと拡張システムに向けることで、L-ISAのリアリズムとイマーション感の両方を最大限に引き出すことに成功しました。」「通常のL/Rシステムなら、同じリアリズムとイマーション感を出すことはできませんでした。」

「通常のシステムでは、もちろん音源を意図的に配置します。ミキシング・エンジニアとして最高のサウンドが聴こえる場所にいる一方、観客は必ずしも同じ良いサウンドを聴けていないことがわかっているのでそうします。」と、Barbato氏は加えて述べました。「L-ISAでは、改善された立体音像のおかげで、観客の大半は、FOHエンジニアがミックスしているものと同じようなサウンドを体験することができます。結果は素晴らしいものでした。未来がやってきました。」

「ステージ上では、イン・イヤーシステムでモニターミックスを聞いているので、L-ISAサウンドが聞こえることはありませんが、サウンドチェックの時に客席に行って少し聞くことができました。本当に素晴らしかった。」と、Serra氏は言いました。 「その周波数レンジも、ミックス内のスペースも非常に広く、とっても精密です。 L-ISAはオーディオのVRです。これは、サウンドシステムの未来だと思います。 だって、一度それをコンサートで聞いたら、もう以前のサウンドシステムに戻れないのですから。人生で数多くのコンサートをやってきましたが、サウンドについてこんなに良いフィードバックを頂いたのは、初めてです。」