2018年9月
Rat Soundは、ニューヨークの有名なテニス会場で行われたコンサートで、フルシステムのL-Acoustics サラウンド・システムをセットしました。

2017年に発表された3枚目のスタジオアルバム、Relaxerのワールドツアーを行っている英国のバンドalt-Jは、6月15日に L-Acousticsの革新的なL-ISAイマーシブ・ハイパーリアル・サウンド・テクノロジーを使用してニューヨークのクイーンズにあるForest Hills Stadiumで360°のサウンド・スケープを提供し、約12,000人のファンを集めた最初のロックバンドとして歴史に名を残しました。

「会場のどこに座っていても、音楽に囲まれていているように感じられます」と、Alt-Jのキーボーディスト、Gus Unger-Hamiltonはショーの前にイギリスの音楽雑誌、NMEに語りました。

シカゴをベースにするLance Reynoldsはalt-JのFOHエンジニアであり、2015年以来バンドのSRシステムとして常にL-Acousticsを使用しています。バンドのマネージャ、Stephen Tavernerが以前からサラウンドサウンドでパフォーマンスのできるテクノロジーを探していたので、ReynoldsはL-ISAの見学のため、カリフォルニア・ウエストレイクビレッジにあるL-AcousticsのアメリカHQを訪問しました。「このテクノロジーを一度試してみてからは、その無限にある可能性がすぐ分かりました」とReynoldsは言います。記憶に残る素敵なライブショーになるだろうと思い、TavernerとバンドのメンバーはReynoldsと熱意を共有しました。

全員が同意し、ReynoldsはL-ISAのミキシングを学ぶためにalt-Jの3人のメンバーと共にL-Acousticsを再び訪問し、サラウンド機能を活用するライブとプリレコーディングされた要素を組み込んだショーのミックスをデザインしました。

「ショーのミックスを準備したとき、alt-Jが興味深い音作りとサウンドエフェクトをたくさん持っているのがラッキーだと思いました」と、Reynoldsは言います。「これらの要素はもちろんいつものライブショーでも効果はありますが、L-ISAの方がはるかに効果的です。この技術から得られるものの中で、楽器や音の位置を正確に特定することなどがあります。それはこの360°ミックスではかなりの特徴です。 FOHエンジニアにとって大きな進歩なのです。普段は、私のミックスに観客が気付かないようにしています。理想を言えば、素敵なサウンドを作りながら、観客がバンドに集中してもえるようにしています。しかし、L-ISAを使用すると、違いに気が付いてもらいたくなります。ファンたちを驚かせて、感動させたかったのです。 オーディエンスが頭を振りながら、音楽に完全に浸らせるように努めました。」

Reynoldsが達成したかったもう1つのことは、ショーのスイートスポットを広げることでした。 「FOHは最高のサウンドを楽しめる場所なのです。エンジニアとして、聴きたいものを作り出してだいたいみんなにそのミックスを楽しんでもらいたいと思っています。しかし、会場の端や、バルコニーなどに座ると、エンジニアが聴いているものと違うサウンドになってしまいます。しかし、L-Acousticsの技術では、そのような心配はありません。L-ISAショーなら、観客も私がFOHで聴いているサウンドを楽しめるのです。会場全体でより良い体験をする能力をもっています。」

その巨大なL-ISAゾーンを作り出すために、バンドの長年のプロダクションプロバイダーであるRat Soundは均等に12台のK2アレイを3つ、ステージの中央にフライングして、左右に16台のKaraのシングルハングを補強としました。

8台のKS28サブシステムによる2つのハングは、中央のK2アレイの後ろにフライングされました。これらの5つのアレイの左右に、16台のKaraの拡張システムが中央に向かってフライングされています。さらに、各側に9台のK2が設置されており、ステージのすぐ横に座っていた観客にアウト・フィルを提供しました。Karaの3ペアとARCS IIの1ペアがフロントフィルとして使用されました。

 Rat SoundのKシステムエンジニア、Tom Worleyは客席最後部の手すりの後ろにポールを取り付け、16台のSyvaサラウンド・スピーカーのために専用のマウントシステムを作成しました。固定施設、企業やプライベートのイベントのアプリケーションで頻繁に使用される便利なSyvaは、Forest Hillsにも最適でした。「Syvaはパワフルで、軽量であるうえ、正確なディスパーションを持っています。そして、サブを使用しなくても、十分な低域も再生します」。L-ISAコントローラソフトウェアはサウンドオブジェクトを配置し、L-ISAプロセッサは空間的なオーディオ処理に使用されました。 システム全体は15台のLA12Xと31台のLA8アンプリファイド・コントローラによってドライブされました。

Reynoldsのコンソール、Avid S6LからMADIで、最大96出力を利用できるL-ISAへ最大32出力をフィードしていました。「各チャンネルに1対1で送ることができますが、ステムを使用することにしました。」 また、キックドラムの2つのマイクを1つのチャンネルにまとめてバスする方が簡単だったことを指摘しました。「更に、いくつかのサブミキシングを行うためや、適切なサラウンド・スピーカーから音源を得るために追加のチャンネルが必要だったのです」。

これらの追加した出力は、タイミングに対処するために使用されました。最も遠いSyvaスピーカーはステージから約75mのところに配置されており、メインPAの信号より先に聞こえないように、サラウンド・スピーカーにディレイを付ける必要がありました。しかし、75mの距離を正確に補うことは、フロント席のオーディエンスにとってディレイを倍にする必要があります。「ディレイが聞こえても、舞台からの音に干渉しないようにレベルを適切に上げることが最大の課題でしたが、創造力を利用してうまく解決できました」と、Reynoldsは述べました。

L-ISAミキシングはReynoldsがForest Hillsのために考えたワークフローにシームレスに融合しました。「コンソールは単にL-ISAにミックスを送っているだけで、私は照明やその他の要素を制御するショー・オートメーションを実行するタイムコードによってガイドされながらL-ISAコントローラでスナップショット・オートメーションを使用していました」と、言います。

ヘリコプターの近づいてくる音やオオカミの遠吠え、Pleaderの中の子供の合唱団など、ショー全体のサラウンド・エフェクトはオーディエンスに鳥肌を立てさせ、喝采を招きました。Reynoldsは、Hunger of the Pineで曲の最初から流れる、クリックに似た心臓の鼓動のようなリズムもうまくいくか心配していました。「曲が本格的に始まる前に、最初の8本のバーで手動の作業をするなら大丈夫だろうと思いました。 その鼓動を会場に伝える作業は、カリフォルニアに本拠を置くL-ISA Labsのエンジニア、Carlos Mosqueraが上手に行いました。Carlos はiPadのコントローラを使って指一本で非常に正確的に音を移動させていました。 本当に楽しかったです」。

ショーの最後まで、ReynoldsはL-ISAのパフォーマンスに興奮していました。「実は、ショーの前日と当日の朝も、パフォーマンスがどれほど素晴らしくなるか全く想像ができなかったのです。サラウンド・スピーカーで、スタジアムが完全に浸られた瞬間があり、その素晴らしさにすごく感動しました。私は今まで経験したことがなかったサウンドで会場をカバーしました。スタジアムのメインフロアを横切って、左から右へ、前から後ろへ歩き回りましたが、どこにいても同じミックスが聴こえました。大きな違いは見つけられませんでした。スタジアム全体がイマーション・ゾーンになっていました。素晴らしかったです。」

ショーの後、観客とのインタビューでは、その感想はすべて同じであることが分かりました。
「本当にすごかったです!音が至る所から聴こえてきていました。 左と右から、そして前と後からも!とても良いイマーシブ体験でした。」
「時々彼が私の耳へささやいているかのようでした。色んなコンサートに行ったことがありますが、音楽と一体化したような気がするなんて初めてでした。最後列に座っていても、バンドが私たちを取り巻くように感じました。感動して仕方がありません。」

インタビューなどの詳細については、https://youtu.be/_LyoYv9zT1w(英語)をご覧ください。
alt-JとRat Soundの詳細については、www.altjband.com と www.ratsound.comをご参照ください。