2025年3月に開催された、インストゥルメンタル・ポストロック・ミュージックの 「Can Festival 」は、浙江省舟山市にある大青山と東シナ海のドラマチックな景色を背景に、ライブサウンドの進化を決定づけるものでした。中国語で缶詰を意味する缶頭(グアントウ)氏のあだ名に因んで名づけられた、革新的なCan Festivalと再びタッグを組み、L-ISAイマーシブ・ハイパーリアル・サウンド・テクノロジーを駆使して、かつてない音響体験を実現いたしました。

リピーターの観客からは即座に熱い反応が返ってきました。これは単なるアップグレードではなく、フェスティバルにおける音楽の表現方法と受け止め方に根本的な変化をもたらしました。

L-AcousticsのAPAC担当セールスディレクター、デイヴィッド・クーパー(David Cooper)はこの変化を次のように述べています。「Can Festivalでは、L-ISAのイマーシブかつハイパーリアルなSRシステムを再び導入し、アップグレードしました。息をのむような体験でした。私がこれまで参加した他のフェスティバルと比較しても、まったく異なる体験であり、非常に特別で忘れられない瞬間でした。」彼は、Can Festivalチームの先見性と、L-ISAを操るミキシングエンジニアが実現した卓越したクオリティを称賛しました。

この「全く異なる体験」というビジョンは、フェスティバルの主催者にも共有されていました。フェスティバルを牽引するホアン・ヤードン(黄亜東)氏は、L-ISAの導入をこう語ります。「L-ISAの考え方はとてもシンプルです。一度カラーテレビを体験すれば、白黒テレビに戻りたいとは思わなくなるようなものです。」フェスティバルの創始者である缶頭氏は、「L-ISAは、映画が2Dから3Dに移行するようなものです。多次元的な音場を持つライブパフォーマンスを一度体験すると、2.0や2.1のサウンドに迫力が欠けていると感じるのは必然です。」と補足します。

ライブサウンドにおけるイマーシブ音響空間の設計

この新たな次元のサウンドを実現するには、高度な技術と熟練した運用の両方が必要でした。2025年の Can Festival で使用されたL-ISAシステムは、大規模なものでした。

  • K2エンクロージャー60台がフロントシステムのパワーとカバレッジを提供
  • Kara IIキャビネット116台をサラウンド、オーバーヘッド、フィル用途に配し、不可欠な空間表現を実現
  • KS28サブウーハー32台で低域のインパクトを形成

L-AcousticsのパートナーであるRightway Audio Consultants Ltd.(RAC)のL-ISAシステムデザイナー、リ・フォン(李峰)氏は、綿密な計画の重要性を強調しました。「システム設計を完了して初めて、イマーシブなパフォーマンスの効果を予測でき、L-ISAならではの魅力を観客に届けることができるのです。」

会場となった海岸と山岳地帯に囲まれたユニークなロケーションは、視覚的に美しい一方、音響面と環境面でも大きな課題を伴いました。「ここは海辺で、海風や波の影響が非常に顕著です。特に数日前のリハーサルでは、風速が7〜8メートルに達する場面もありました。」と李氏は説明します。

このような状況にもかかわらず、李氏は屋外設置のメリットを指摘します。「屋外では、屋内の壁による反射の問題を回避できるため、我々が思い描いた音響効果を実現しやすいのです。また、L-ISAシステムのRoom Engineツールを用いて、バンドの要望に応じた異なる残響効果を作り出しました。」

同じくRACのイマーシブサウンドシステムエンジニアである、ジョウ・フォンシン(周鳳歆)氏は、さらなる課題についてこう述べました。「強風はスピーカーの構造的安全性にも影響します。そして、突風により音が流される恐れがあります。」 Hangzhou D&S Stage Art EngineeringのPAエンジニア、ジュ・ジュンリン(朱俊琳)氏も風が聴感に与える影響に触れ、「今回の最大の課題は、システム調整中の屋外での強風により、高音域の聞こえ方が変化したことでした。」と語りました。

そんな中でもチームの技術力は決定的な役割を果たしました。「風が少し弱まると、すぐに対策を講じて再度 調整を行いました。」と周氏。「公演中も常に調整を続けていました。日中の猛暑と夜の冷え込み、そして湿度の急激な変化など、サウンドシステムは常に変化に対応しなければなりませんでした。システムの自動補正機能はある程度の変化には対応できますが、やはり人の耳による判断が不可欠です。」

L-ISA:アーティストとエンジニアの潜在能力を解き放つ

L-ISAテクノロジーの目的は、芸術に貢献することです。このイベントのイマーシブサウンドプロデューサーを務めた Hangzhou D&S Stage Art Engineering (杭州达斯舞美 )のワン・ティエチュン(王鉄群)氏は、「私は常に、すべてのテクノロジーは芸術のためのものであり、芸術は感情と深く関わっていると信じています。テクノロジーは、人の感情により深く訴えかけ、内面的な体験へと導けるものであるはずです。」と力強く語りました。

2年連続でCan Festivalでサウンドエンジニアを務めた朱氏にとって、L-ISAは自らの制作・表現手法における進化をもたらしました。「昨年2024年のCan Festivalが、私にとって初めてのL-ISA体験でした。当時は多くの困難に直面しました。」と彼女は振り返ります。「しかし今年、李さんに誘われ、RACの北京オフィスでL-ISAのミキシング技術を深く学ぶ機会を得ました。この学びを経てL-ISAの扱いに慣れ、2025年のフェスティバルでは、表現したい効果をより容易に実現できました。」

彼女の「音を届ける者」としての視点は、L-ISAがエンジニアにどれほど力を与えているかを強調しています。「バンドは声であり、私たちチューナーの仕事は、バンドの演奏をより良く、より詳細に、より完全に聴衆に伝えることです。」L-ISAは、比類のない精度と芸術性でこれを実現するための、繊細なコントロールと空間表現力を提供します。

ライブサウンドの新たなスタンダード

2025年のCan Festivalは、L-ISAテクノロジーがライブオーディオの在り方を再定義する力を持っていることを示しました。緻密なシステム設計、環境条件への高度な適応、そしてエンジニアたちの創造力の融合が、アーティストと観客の双方に深く響く体験を生み出しました。このイベントは単なる成功例にとどまらず、今後のライブオーディオの未来を示す有力なケーススタディでもあります。イマーシブサウンドは一時的な流行ではなく、音楽やパフォーマンスの体験そのものが進化する過程の中核を成しています。Can Festivalで披露されたL-ISAは、従来のSRの限界を押し広げることで、可能性の新たなベンチマークを確立し、世界中でより魅力的で、感情に訴えかけ、忘れられないライブイベントへの道を切り開いています。

缶頭氏が述べたように、このフェスティバルは「将来の音楽フェスティバルの制作基準に対する、私たちの確固たる姿勢」を確立することを目指しています。この深い没入体験と熱烈な反応は、L-ISAが単なる選択肢ではなく、進化を遂げ、ライブ音楽とのより豊かで魅力的、そして感情に響く繋がりを提供することを実証しています。

L-Acousticsは、Can Festivalの全関係者、Rightway Audio Consultants Ltd.、Hangzhou D&S Stage Art Engineering 、そしてこの特別なイベントを実現させたすべての才能あるエンジニアとテクニシャンに心より感謝を申し上げます。音の未来への旅は、これからも続きます。私たちは、このようなコラボレーションの先にある可能性を、心から楽しみにしています。