ハリナ・ライスとPolygon Live、L-ISAを用いて空間オーディオのサウンドスケープを創造

アーティストがどのようにして、私たちを別世界へと誘う空間オーディオ体験を創造するのか、考えたことはありますか? その答えが、Wonderfruit 2024 での音の没入体験にあります。観客の熱気、素晴らしいパフォーマンス、そして Polygon Live のステージから放たれる圧倒的なサウンド。2025年5月に 華々しいデビューを飾った Polygon Live LDN が開催される前に、音の建築家 Halina Rice(ハリナ・ライス)氏と共に、私たちは忘れがたい空間オーディオ体験を Wonderfruit で創り上げました。
ライス氏は、音楽、アート、テクノロジーを見事に融合させる才能を持つ、イマーシブサウンドの真の先駆者です。ジャンルの枠を超えた作品や、先進的な「NEW WORLDS」プロジェクトなど、常に限界を押し広げ、360°ビジュアルやメタバース環境を基盤とした空間オーディオ体験を生み出しています。彼女が Wonderfruit の Polygon Live ステージにこのビジョンを持ち込んだことで、まさにハイパーリアルサウンドの楽園が誕生したのです。
Polygon Live:音の遊び場(L-Acoustics スピーカーが約100台!)
まだPolygon Liveを体験したことがない方のために説明すると、これは一般的なステージとはまったく異なります。LEDで照らされ、光り輝くドームが脈打つように輝き、約100台の L-Acoustics スピーカーを備えた、360°の L-ISA Immersive Hyperreal Sound システムが構築された空間。それは完全に観客を包み込む、唯一無二の音響体験を提供する「音の遊び場」です。Polygonの没入型オーディオ体験についてもっと知りたい方は、以前のブログ記事もぜひご覧ください。
アビー・ロード・スタジオからドルビーアトモスのリリースまで、空間オーディオを探求してきたライス氏は、Polygon Liveのパワーを真に解き放つのに最適なアーティストでした。しかし、果たしてこのようなパワフルなサウンドシステムの内部で演奏するというのは、実際どのような体験なのでしょうか? そして、空間オーディオはライブ音楽体験をどのように変えるのでしょうか?彼女のWonderfruitデビューの舞台裏に迫ってみましょう。
ステレオを超えて:L-ISA で空間オーディオを創る
ライス氏とPolygonの関係は、2024年6月に始まりました。彼女は Polygon Productions の共同創設者 Nico Elliott(ニコ・エリオット)氏と出会いました。エリオット氏は先見の明を持つ人物で、ビジネスパートナーのArchie Keswick(アーチー・ケズウィック)氏とAdam Nicholas(アダム・ニコラス)氏と共に、7年間Polygonのコンセプトを構築・拡張してきました。彼らのミッションは、Wonderfruitからアムステルダム・ダンス・イベント、そしてシンガポールのF1プレパーティーまで、世界中で空間オーディオイベントを制作することです。
空間オーディオに一貫して取り組んできたライス氏にとって、このコラボレーションは自然な流れでした。彼女はこう語ります。「没入型テクノロジーの活用は、私のサウンドデザインへの関心を補完し、感情を伴ったエレクトロニック・ミュージックをより強く届けるための次元を与えてくれます。」彼女が L-ISAテクノロジーに初めて触れたのは2019年、アビー・ロード・スタジオでのこと。それから5年、彼女は2024年12月の Wonderfruit にて、完全な360°空間オーディオによるライブセットを披露しました。

写真提供:マリア・ジトニコワ 、レッド・フレイム・クリエーションズ
Polygon ドームのための空間オーディオ設計
2,500人を収容し、独自のLEDライトネットワークを備えたポリゴンドームに足を踏み入れるだけでも、非日常的な体験です。しかし、ライス氏が巧みに説明するように、空間を真に変貌させるのは、360°L-ISA Immersive Hyperreal Sound構成に設置された約100台のL-Acousticsスピーカーです。「ドームの構造には幻想的な質感があり、まるでドームが光だけでできていて、ホールは音でできているかのように感じられます。観客は陶酔し、体験に身を委ねるように没入していました。」
空間オーディオについてイメージしづらい方のために説明すると、オーディオが単なる平面的なステレオトラックではなく、個々のサウンド「オブジェクト」の集合体だと想像してみてください。L-ISA ソフトウェアでは、これらのサウンドオブジェクトを空間上に正確に配置することで、立体的なサウンドスケープを生み出せます。ディレイやリバーブなどの空間エフェクトを駆使すれば、音が空間を舞い、響き渡るような表現も可能です。まさに「音で絵を描く」ような感覚で、アーティストやエンジニアにかつてない表現力を与えてくれます。
Wonderfruitでのパフォーマンスにおいてライス氏は、穏やかで信頼のおけるダヴィッド・ロペス・デ・アレノサ(David Lopez de Arenosa)氏が率いるPolygonのオーディオチーム、そして特にエンジニアのデイビー・ウィリアムソン(Davey Williamson)氏と緊密に連携しました。彼女はAbleton Live で制作したステム素材を提供し、それが L-ISA のソフトウェアとプロセッサに入力されました。これにより、Polygonのオーディオエンジニアは「音を迅速かつ柔軟に空間上に配置」することができ、ライブセット中に即興的な操作をすることもしばしばありました。まさに演奏の中のもう一つの演奏と言えるでしょう。
信頼、没入、そして明るくクリアな未来へ
セットの冒頭、ライス氏の楽曲『SPLIT』がドームに響き渡る中、リードシンセは計画通り左右に移動、エンジニアとアーティストは、ステージ上の空間モニタリングシステムを通じて、音楽がリアルタイムで観客にどう届いているかを体感していました。「セットはうまくいきました。」とライス氏。「会場は照明と音楽のバイブスな融合を楽しむ人々でいっぱいでした。観客は完全に没入感に包まれ、素晴らしい雰囲気でした。」
ライス氏のWonderfruitでの経験は、より広範なトレンド、つまり没入型イベントの成長を如実に示しています。アニマ(Anyma)の視覚的なスペクタクルや、ラスベガスの Sphereのような巨大施設など、観客はより多くの感覚刺激を求めています。録音コンテンツの分野でも、空間オーディオは急速に一般化しており、AirPods や車載スピーカーでも対応が進んでいます。今や私たちは転換点に差し掛かっており、未来は驚くほど明るいです。
さらに明るい未来と言えば、ライス氏は今年5月にPolygonのイギリス初開催となるフェスティバル、Polygon Live LDNに参加しました。これは決して簡単なことではありませんでした。2つのドーム、約200台のL-Acousticsスピーカー、そして360°L-ISAイマーシブサウンドを、1日あたり5,000人という驚異的な観客に届けるという壮大な挑戦でした。英国の観客にも、この魔法を体験してもらえたことを非常に喜ばしく思います。
今後も、L-Acoustics による革新的な空間オーディオ体験の冒険にご期待ください。