2023年3月
去年夏にオープンした、フランス・ポワチエにあるFuturoscope(フュチュロスコープ)最新のアトラクション『Chasseur de Tornades』(以降『トルネード・ハンター』と言う)は数々の賞を受賞しており全世界から高い評価を得ています。同アトラクションは、トルネード・ハンターのチームの冒険を語る、息を飲み込むような360°の没入型体験です。2100万ユーロ(約30億円)をかけた、このランドマークプロジェクトはヨーロッパ最大の円形LEDスクリーンを導入しています。ハリウッドVFXスペシャリストのフランソワ=グザヴィエ・オバーグ(François-Xavier Aubague)氏が、ライブアクションのシーンが混じったメディアコンテンツを監督し制作しました。新しいアトラクションは、動画のシーンと合わせて、急に上がったり、下がったり、傾いたり、回ったりする可動式プラットフォームと、L-Acousticsの画期的なL-ISAイマーシブ・ハイパーリアルサウンド・テクノロジーを利用して来園者を楽しませます。

未来的な技術を紹介する目的で90年代に開園したFuturoscopeは、最先端のジェットコースター、没入型アトラクション、シネマティック体験等を提供する、テクノロジーに焦点を当てるテーマパークへと変化しました。最新のアトラクションでユニークなテーマを持つ『トルネード・ハンター』は、オープンして以来、権威あるThea賞でベスト・アトラクション賞など、業界から数々の表彰を受けています。

このアトラクションは、直径17mの円形オーディトリアムに、床から天井まで広がる360°のLEDスクリーンが設置されています。スクリーンの一部が床下へ沈みこむと、ライブアクションのシーンを映し出す、幅10mのメインステージと幅5mの小さいステージが現れます。物語の先導役は、トルネードを追従しながら客席の周りを走るバギーカーです。観客が回転プラットフォームの中央に座っている間、車はスクリーンの後ろに消えていくわりに画面に映りこんでいき、スリル満点のショーになります。


オーディオ・テクノロジーの中核的な選択を含め、アトラクションのAVコンポーネントは、技術サポートを管理するFMDが指定しました。FMDは既に過去の設備でL-Acousticsの経験を持っており、ブランドの革新的な製品ラインナップと素晴らしい評判が導入の決め手になったそうです。

「1997年にL-Acoustics V-DOSCシステムをパークに導入して以来、同ブランドを愛用しています。2016年に初めてL-ISAテクノロジーを導入する施設の1つとなり、その能力に驚きと感銘を覚えました。」とFuturoscopeのデヴェロップメント兼プロジェクト・マネージャであるヤニス・マルシェ(Yannis Marchet)氏は説明します。「このプロジェクトの初期段階の調査では、他社から似たようなオーディオ・テクノロジーが提供されていることが分かりましたが、このアトラクションの設計段階で、すぐにL-ISAが理想のソリューションであることが分かりました。唯一無二のアトラクションにとって、テクノロジーと映像の同期性が不可欠で、L-ISAが最適なソリューションだと感じました。映像のプロデューサーと一緒に、ビジュアルにサウンド・オブジェクトの動きを合わせるなど、コラボを深めるためにL-Acoustics本社にまで行きました。」

オーディオはバギーカーの動きを追従する必要がありました。まず、静止した状態に合わせたL-ISAミックスを作成しました。次に、L-ISA ProcessorとDAWプラグインを利用して、自動のダイナミック・カーブを追加して車の動きを再現しました。プロデューサーとサウンド・デザイナは数か月をかけて、各シーンにそれぞれのサウンドトラックを割り当てて映画を完成させました。最終的にオーディオ・ミックスは異なるバージョンで 30も出来上がり、それぞれ会場でテストされました。完成したミックスが録音され、L-ISA Studioでミックス・エンジニアがプログラム化してショー中にプレイバックとして使用されました。


LEDスクリーンが音響的に透過的ではないため、チームは観客のために最高のカバレッジを確保するためにL-Acoustics Soundvisionソフトウェアを利用して、スクリーン上部の周りに16台の小型X8ショートスローエンクロージャーを設置しました。さらに4台のX8スピーカーがインナーサークルを形成し、インナーサークルの中央にもう1台のX8がオーディエンスのために真下を向いています。低域の補強は3台のKS21サブウーハーが天井に下向で設置されています。また、3台のX12がメインステージに、2台のX12が小ステージに設置されています。6台LA4Xが、L-Acoustics M1測定プラットフォームを利用して設計されたシステムをドライブし、P1 Milan AVBプロセッサーがネットワークを管理します。

座席プラットフォームを除き、『トルネード・ハンター』のすべてのパーツがFuturoscopeによってフランスで設計・構築されました。しかも音響機材のインストールは、FMDが設計した高さ8mのトラスフレームにマウントされたアンプを含め、すべてのコンポーネントがわずかの2週間で完了しました。システムはModulo Piメディアサーバーを経由してDanteネットワークに接続され、オーディオのサウンドトラックはPro Toolsを搭載したMacで実行されています。

『トルネード・ハンター』の開発の段階で、アトラクションのチームメンバーのうち2人がL-Acousticsでトレーニングを受け、認定資格を取得しました。これにより、Futuroscopeがアトラクションのメンテナンスを自主的に行うことができるようになりました。「認定を受けたチームメンバーを常駐させることは、決して贅沢なことではありません。」とマルシェ氏は説明します。「オープンからの2か月で、35万人もの来園者がこのアトラクションに乗ってくれたので、すべてがうまくいくことを確認することは必要不可欠です!」

結論として、マルシェ氏はこう語ります。「これまで立ち上げたプロジェクトの中で一番規模が大きいものですが、設計図もなく作業を進めました。結果は見事なもので、L-ISAテクノロジーに非常に満足しています。もう一度やり直すとしたら、何も変えることはしないと思います!」

会場は、直径17mの可動式プラットフォームと、上部にL-Acoustics X8が配置され、床から天井に広がる360°のLEDスクリーンで構成されています。

プリントアウト版はこちらから