2019年8月

2013年から毎年夏に、世界的に有名なスカラ座は、イタリア、ミラノの中心にあるドゥオーモ広場を野外コンサート会場に変身させ、住民と観光客に無料のクラシック音楽の演奏を提供してきました。L-Acoustics Kシリーズシステムは、イタリアの大手レンタル会社であるAgoràによって照明機器と共に供給されました。

今年のセットリストには、巨匠リッカルド・シャイー指揮の下、ドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調『新世界より』と、フェデリコ・フェリーニやルキノ・ヴィスコンティの映画音楽で有名なイタリアの作曲家、ピアニスト、指揮者のニノ・ロタの作品が含まれています。17,000平米のある広場で25,000人のファンを集め、イタリアHDチャンネル「RAI 5」でライブブロードキャストされたこのイベントのために、FOHエンジニアのFabio Venturi氏は、空間全体に均一なカバレッジと、音楽とセットの美しさに合わせたオーディオエクスペリエンスを提供できるシステムの設計を任されました。

「オーケストラは非常に長期的にスケジュールを立てますので、私は普段約1年前から、コンサートの計画を知らされています」とVenturi氏は説明します。「私はAgoràのシステムエンジニア、Daniele Tramontiniさんと協力しています。彼は、この分野におけるイタリアの権威であり、オーケストラのプロジェクトにおいて豊富な経験を持っています。毎年3月にシステムの計画を開始します。管弦楽団は、オーディオのセットアップに関して完全に私に任せてくれます。」

管弦楽団はVenturi氏に完全委任しましたが、パフォーマンスに対するマエストロのビジョンが満たされることが不可欠でした。したがって、彼の最終目標は、最も柔らかなピアニッシモから最も大胆なフォルティシモまで、プログラムのあらゆる瞬間に満足できるサウンドレベルを達成することでした。

Venturi氏とTramontini氏には、これを達成するためにいくつかの克服すべき課題がありました。モニュメントと歴史的街灯を備えた広場自体はセット上の制限を課した一方、コンサート中にも運休されなかった路面電車は、大きな聴衆とともに、かなりのレベルの騒音を周囲に生み出していました。


「完璧なカバレッジという目標を達成し、パフォーマンス全体で音質を維持するために、コンサートの前にPAの設計に意識を集中しました」とVenturi氏は説明します。「L-Acoustics Soundvision 3D音響シミュレーションソフトウェアにより、SPLと周波数レスポンスの観点から観客のカバレッジを正確に予測することができました。これにより貴重な時間をさらに節約できました。」

オーケストラのために100本以上のコンデンサーマイクがステージ上に立てられたので、マイクへの入力を最低限に抑えながらコンサートに十分なヘッドルームを確保するために、メインPAの位置も非常に重要でした。

「街灯があったため、PAタワーの最適な位置と高さが制限されていました」とVenturi氏は加えて述べます。「オーケストラのマイクがスピーカーから不要な音を拾うのを防ぐためにメインPAの側面にカーテンを掛けるなど、さまざまなソリューションを使用してこの問題を解決しました。」

Venturi氏とTramontini氏の最終設計は、ステージの左右に配置された10台のK1の下に5台のK2組み合わせたメインハングと、ステージに隣接する2つのスクリーンそれぞれの外側に配置した12台のK2のサイドハング、そして6台のKaraによるセンターフィルで構成されました。また、ステージリップに沿って均等に配置された8台のKaraキャビネットをフロントフィル、およびディレイとして採用されました。ディレイは、広場の後部をカバーするために、左右に配置された10台のKaraによる2つのハング、さらに12台のKaraによる2つのサイドフィルディレイ・ハングと、8台のKaraによる1つのセンターディレイ・ハングを配置しました。

Venturi氏によると、結果はSoundvisionの予測通りになり、最も重要なことに、リッカルド・シャイー氏はTramontini氏とAgoràのチームが達成した結果に満足しているとのことです。

「マエストロは、彼のアシスタントが指揮したコンサートのリハーサルを試聴することができました」とVenturi氏は指摘します。「彼は観客エリアに立って、広場全体を歩いてみてカバレッジが均一していることを自分で確認していました。全体的にオーディオが素晴らしいと印象を伝えてくれました。Agoràチームと一緒に指定した目標を達成することができて、本当にうれしく思います!」