リアーナのパフォーマンスで、20年以上ぶりにスーパーボウルにL-Acousticsが導入されました。
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2023年2月
2月12日日曜日、グラミー賞9回受賞のリアーナは、カンザスシティ・チーフとフィラデルフィア・イーグルスが対戦するスーパーボウルLVIIで、ハーフタイムの舞台に登場しました。彼女の鮮やかな赤い衣装と同じくらいの目の覚めるような演出で、アリゾナ州グレンデールのステート・ファーム・スタジアムに設置された装置から、重力に逆らうようなプラットフォームに乗って飛び立ったのです。ショーは、試合そのものに匹敵するパフォーマンスでした。『アンブレラ』『ワーク』『ダイアモンズ』『ラン・ディス・タウン』など、彼女の大ヒット曲を中心に13分間、およそ100人のダンサーが出演し、その多くも宙に浮いていたのです。至高のサウンドを求めるこのパフォーマンスに、Clair GlobalのブランドであるATK AudiotekがL-Acoustics K2システムを提供しました。

今年のハーフタイム・ショーのサウンドシステムは大きく変わりました。今まで、仮設のミュージックシステムは素早く移動できるようにキャスター付きのシャリオットにマウントされていました。ハーフタイム・ショーのリギングは大勢の地元のボランティアが、主審がハーフタイムのホイッスルを鳴らした直後に、舞台装置をあわただしく運んで数分内で作業を行っていました。しかし、今年のスーパーボウルは立派な天然芝生とユニークな開閉式ドームを持つステート・ファーム・スタジアムが開催地となったため、独自の課題をもたらしました。

「NFLは今年フィールド上に機材を置くことなどを禁じました。もちろんシャリオットを使用することができません。」とこのプロジェクトでATKのチーフエンジニアを務めたカーク・パウェル(Kirk Powell)氏は説明します。「代わりに、仮設の音響システム全てをフライングしなければなりませんでしたが、意外とポジティブな結果につながりました。フライングすることで、より多くの機材を使用することができました。シャリオットでマウントできる台数は76台に限られるのに対して200台以上もフライングする場所を確保できました。その結果、よりパワフルなサウンドを実現できたし、ボウルの一番上の席にまでカバレッジを大幅に改善できました。」

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ステート・ファーム・スタジアムは、2016年に122台のK2と32台のK1-SBのL-Acoustics システムを常設で導入しています。今年のハーフタイム・ショーに向けて、ATKは常設のシステムを、13台のK2の下に4台のK1-SBによる6つのアレイで補強しました。片側3つのアレイが会場のレンズトラス・システムから吊られて、さらにKS28による4つのサイドラインハングが配備されました。また、各エンドゾーンに10台のK2による2つのアレイと8台のKS28による1つのハングが採用されました。仮設のシステムはL-Acoustics LA12Xアンプリファイド・コントローラーで、常設のシステムはLA8でドライブされました。

「スタジアムのエンドゾーンのK2ハングは、ショーに必要な位置になかったので利用しませんでした。」とパウェル氏は語ります。「それらは、どちらかというとシャワークラスターとしてデザインされていて、私たちがデザインしたシステムに適していませんでした。」サイドラインクラスターのK1-SBはクラスターの低域拡張として機能し、8つのKS28クラスターがメインのサブウーハーとなりました。さらに、8台のサブウーハーがボウル下部にも配備されました。パウェル氏によると、サブウーハーが多く活用され、パワーがあふれたそうです。「ローエンドがヘビーなショーでした。」と語ります。

信号はDante経由でFocusrite RedNet D16Rsインターフェイスに送信され、そこからAES経由でLA12Xアンプに伝送されました。システムミキシングはFOHのDiGiCo Quantum338 オーディオコンソールで、モニターミキシングはSD5で行われました。

リアーナの公演でFOHミキシングを担当したデイヴ・ナタレ(Dave Natale)氏は、輝かしいキャリアを持つ人物です。 彼はローリング・ストーンズ、プリンス、ティナ・ターナー、スティービー・ニックス、イエス、モトリー・クルー、フリートウッド・マックなどのライブ音響を担当し、最近のスーパーボウルのハーフタイム・ショーも4回担当しています。一言で言えばK2システムの性能に感動したそうです。

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「これは本物のロックコンサートのPAシステムでした。エキスパートによって組み立てられた、最先端のテクノロジーで構成された巨大なミュージックシステムでした。単純に素晴らしい音を出していたのではなく、会場のどこまででも素晴らしい音を鳴らしていたのです。ATKオーディオ・プロジェクトマネージャー兼システムデザイナーで、前後のイベントのミキシングを担当したアレックス・ゲサード(Alex Guessard)さんと僕は、スイート席を含めてメインレベルからテラス席まで、会場全体を歩き回ったところ、音の悪い席は1つも見つかりませんでした。しかも、ハングを設置できる場所がほとんどサイドラインに限られたという厳しい状況にもかかわらず、です。」

ナタレ氏は特に、このショーに重要だったシステムのローエンドを評価しています。エンドゾーンにある8台のKS28クラスター、サイドラインハングの4台のK1-SB、KS28による2つのハングと、追加8台のサブウーハーの組み合わせにより、壮大なローエンド環境を実現できました。「サブに能力を発揮させたのですが、ヘッドルームに無理なく余裕でそれを実現しました。単純にパワフルでした。」

会場の常設システムとしてL-AcousticsのPAが存在していたのも大きな利点となりました。「L-Acousticsを採用したのは、素晴らしいサウンドを実現するシステムだし、会場の既存システムとの統合などシステムデザインを簡素化したからです。」とパウェル氏は説明します。「このシステムを利用することによって自由度が高まり、とてもありがたいことでした。ショーのサウンドは素晴らしく、結果にだれもが満足しています。最後はみんなニコニコでした。」

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