2024年7月
1997年のグランド ・オープン以来、Francis Winspear Centre for Music(フランシス・ウィンスピア音楽センター)の1,716席の Enmax Hallは、エドモントン・シンフォニー・オーケストラの主な演奏会場として機能してきました。しかし、この素晴らしいコンサートホールは、ブルース、カントリー、フォーク、ジャズ、ロックなどのジャンルのツアー・アーティストによるパフォーマンスのほか、さまざまなコミュニティイベントが定期的に開催されることでも知られています。このホールの幅広い音楽スタイルに最大限対応するために、dbi Systems IntegrationはL-Acoustics 公認プロバイダーのFM Systemsと協力し、カナダ初の常設 Lシリーズによるコンサート用サウンドシステムをWinspear Centreに設置しました。

dbi SystemsとFM Systemsは、Winspear Centreへのサービスを分担して提供しており、dbiは常設のインハウスAVシステムをすべて提供し、FMはプロダクションサービスとレンタルをすべて提供しています。2014年以来、dbi SystemsはWinspear Centreのオーディオ部門責任者であるジョナス・ダフィ(Jonas Duffy)氏と協力し、目的意識を持った長期的なビジョンで継続的なA/Vシステムのアップグレードを可能にするため、短期的・長期的な様々な計画を立てています。

「2021年に進行中のシステムアップグレードの一環として、メインホールの既存のハウススピーカーシステムの交換を検討する時期が来たと判断されました。」とdbi Systems Integrationの代表、ジェリー・ヴァン・ダイク(Jerry Van Dyke)氏は語ります。「今日のトップクラスのスピーカーメーカーの製品を数年にわたって試聴した結果、このプロジェクトに最適なスピーカーはL-Acousticsであると判断されました。その後2年間、Winspear Centre、dbi Systems、FM Systems、L-Acousticsがシステムの設計と構成を協力して行い、dbi Systemsが統合しました。」


同センターの以前のPAは2007年に設置されたもので、より高いSPL能力を求める現在のツアー・アーティストの要求を満たすのに苦労していました。「この業界ではいつものことですが、そのシステムが導入されて以来、技術は大きく変化しており、Winspear Centreは今日の最高のスピーカー システムのパフォーマンス機能を求めていました。」と、dbi のアソシエイト兼シニア・システム・デザイナーであるジョシュア・ドゥギット(Joshua Duguid)氏は言います。「3つの主要な要件は、最高の音質、高いSPL能力、そして会場全体にわたるスムーズで均一なカバレッジです。これらは全てL-Acousticsが完璧に提供できるものでした。」

当初、新システムはL-AcousticsのKara IIスピーカー、フライングKS28サブウーハー、KS21床置きサブウーハー、A15iクワイアー用フィル、5XTリップフィルで構成されていました。しかし、提案期限2週間前にL-Acousticsが「常設とツアーの世界を変える」新しいスピーカーラインを発表することをdbi Systemsは知りました。

性能、美観、会場への適合性、ライダーの受容性などを検討した結果、LシリーズがWinspear Centreのメインホールに採用されました。「L2/L2Dエンクロージャーで会場をモデル化した後、Lシリーズのコンサート・サウンドシステムが、より小さな設置面積で、より優れたカバレッジと優れた音響能力を提供することは明らかでした。」とヴァン・ダイク氏。dbi Systems がこれまで使用したことのない製品を選択することにはある程度のリスクがあることは認識していましたが、L-Acoustics製品の伝統と、約束どおりの成果を上げてきた同社の歴史を考えると、そのリスクに見合う価値があると判断しましたダフィ氏、dbi Systems、L-Acousticsが緊密に協力し、システム全体が2週間で再設計されました。


最終的な設計は、左右のメインアレイに2台のL2エンクロージャーと各側1台のL2Dを組みあわせて配置され、3台目の中央アレイは今夏後半にフライングされる予定です。低域の補強には、カーディオイド構成のKS21サブウーハー 4台がステージの左右両端、メインアレイの真下に設置されています。カスタムRALカラーの超小型X4iが11台ステージ面全体にマウントされ、低い音圧レベルのフロントフィルとして機能し、6台のX8が高い音圧レベルのフロントフィルとして機能します。ステージ上では、2台のA10 Focusのクラスターが2台、Lシリーズハングの上部裏側にマウントされ、聖歌隊ロフトのステージモニターとして機能しています。

アンダーバルコニー・エリアの天井には14台のコンパクトな5XTがフィルとして追加され、2台のX8が、特別なます席のフィルとして機能します。FOHは、2 台の5XTと1台のSB10iサブウーハーを組み合わせたニアフィールド・モニタリングセットアップ、映写室/親子室は3台のX8と1台のSB10i。会場のロビーエリアには、6台のSokaとさらに6台のSB10iで構成されるL-Acoustics システムも設置されています。

Milan-AVB は、コンサート用サウンドシステム全体のオーディオ信号パスとして使用されます。「アンプが5つの違う部屋にあり、それらの間の距離が最大150メートルあるため、Milan-AVBはこの設計に不可欠でした。」とドゥギット氏は説明します。「Winspear Centreの会場は AVoIPに大きく依存しており、すでに Dante、Q-SYS、Video over IPが導入されていました。この設備の大部分は、ネットワークインフラのアップグレードと再設計でした。冗長性が重要であり、システムが常に機能するように、設計/インストールで多くの手順が踏まれました。」2つの完全に独立したスイッチングインフラは冗長ファイバートランクによって接続され、必要不可欠なデバイスは2つの別々のUPS回路に接続されています。L-Acoustics アンプリファイド・コントローラーもすべて24ボルトのバックアップを利用し、停電時のダウンタイムを最小限に抑えています。


システムテスト後の最初のショーは、カナダ系アメリカ人のシンガーソングライター、ジョニ・ミッチェルの音楽をトリビュートしたエドモントン・シンフォニー・オーケストラのコンサートでした。「その夜、お客様から新しいシステムのサウンドと見た目がいかに素晴らしいかというコメントをたくさん聞きました。」とダフィ氏は語ります。「技術者たちは、カバレッジの均一性に驚いていました。以前のシステムでは、アレイボックス間のギャップや干渉作用が聴こえる場所がありましたが、新しいLシリーズシステムは完全にシームレスで、4階のギャラリーの奥までも素晴らしいサウンドです。」

ダフィ氏はL2/L2Dによるサウンドシステムは、スタッフと管理者の両方から、スピーカーの見た目がはるかにすっきりして目立たなくなったという好意的なコメントを多数受けていると語ります。「観客の視点からは、個々のアレイボックスやスピーカーケーブルが見えません。そして、Lシリーズアレイは以前のものよりはるかに高い位置に吊り下げられているため、会場の美しさをより際立たせることができます。」

調整室システムと映写室/親子室システムは、メインシステムを聞いているのとほぼ同じ音響体験が得られます。技術者が密閉された調整室内からミックスする必要があるイベントでは、観客が聞く音と同じ音でミックスを確実に行うことができます。

「L-Acoustics Lシリーズは、このプロジェクトに最適な選択でした。」とdbiのシステムコンサルタント、ジョーダン・ヴァン・ダイク(Jordan Van Dyke)氏は熱く語ります。「このシステムの音響性能とSPL能力は、今後何年にもわたって、事実上どのようなゲスト・アクトのライダーも満足させるか、それを上回ることを保証します。会場で最も頻繁に開催されるイベントであるエドモントン・シンフォニー・オーケストラのコンサートでは、このシステムではサブウーハーをフルレンジにする必要がないため、ステージが非常にきれいに聞こえます。また、アレイをカーディオイドまたはスーパーカーディオイドモードに設定できるため、ステージ上のミュージシャンの体験も大幅に向上します。」

「このような機会はめったにないことなので、10年以上パートナー関係を結んできた会場でこのようなチャンスが訪れるのを見るのは非常に満足です。」とヴァン・ダイク氏は付け加えます。「このプロジェクトは何年もかけて準備されてきましたが、すべてがうまくまとまったのは魔法のようでした。初めてシステムが起動したとき、Winspear Centreのスタッフの反応、驚愕と感嘆の表情、それに続く静寂と自然発生的な拍手を見たのは、私たちにとって決して忘れられない瞬間です。」