2018年9月
ハイパーリアル・サウンドは、クラシック音楽のオーディオ明瞭度をレベルアップします

BBC Promsは、英国を代表する音楽イベントの1つです。100年以上前に設立されたBBCプロムスは、主にロイヤル・アルバート・ホール(RAH)で夏の8週間をかけて開催される、コンサート・シリーズです。室内楽はCadogan Hallで開催され、プロムス・イン・ザ・パークで最終夜「Last Night Proms」が全国に向けたテレビ中継が行われています。2018年のシリーズでは、Delta Liveはプロムスに初のL-ISAハイパーリアル・サウンドを導入したことで、観客に非常にリアルなオーディオ体験を提供することができました。

プロムスとの関係は、2000年に初めてイベントに参加したSound by Design(現在Delta Liveと合併)のころからほぼ20年間続いています。Deltaのアカウント・ディレクター、Stephen Hughes氏は、2004年以来、毎年プロムスを担当してきました。ロイヤル・アルバート・ホールの詳細な情報を持ち、従来通りのステレオ・システムで多く現場をこなしてきました。

L-ISAは以前、RAHでAngus and Julia StoneのコンサートとClassic BRITSのために使用されたことがありますが、DeltaとHughes氏にとっては初めてで、この有名な会場でL-ISAの性能を試すことが楽しみでした。

「音響的にトリッキーな会場です。ここ数年にわたってシステムデザインを改良しました。最近、会場の反射を少なくするためにL-Acoustics K2システムをアップグレードしました。」と、Hughes氏は言います。「それはそれでうまく行きましたが、今回L-ISAでは会場の反射に苦労する必要がなかったことに初めて気が付きました。」

いままでと、大きく違う理由は、ラウドスピーカー間のエネルギーが均等に分散されて、Hughes氏が述べるようにDeltaチームが「音源の正確な場所を明確に提供した」ことにあります。

「素晴らしいリスニング体験です。実は、もう二度とステレオ・システムに戻りたくないです。特にこのような円形劇場では、L-ISAが正しいソリューションなのです。」

DeltaのL-ISAシステムは、ステージ全幅にわたって均等に分散配置された15台ずつのKaraによるアレイ5つのと、中央にフライングされた4台のKS28サブウーファーで構成されました。この構成では、ハイパーリアル・サウンドのイメージングから完全にカバーされるエリア「L-ISA ゾーン」にオーディエンスの60%が入っています。従来のモノフィルシステムは会場の残りの部分をカバーしました。「この会場は、特にリギングポイントの位置に制限があるため、このシステムは最適です。」とHughes氏は言います。

1台ずつX12がステージの両側に設置され、前列席に座っている観客をカバーするために4台のX8がフロントフィルとしてステージ・リップ全体に設置されました。

DiGiCo SD5はFOHに設置され、コンソールに内蔵された L-ISA Desk Linkインターフェイスはショーをミックスと、L-ISAコントローラをダイレクトに接続し、L-ISAプロセッサに出力します。Hughes氏によると、とても直感的で柔軟なツールとのことです。

「SD5のL-ISA Desk Linkは素晴らしいものでした。」とHughes氏は語ります。「L-ISAは適応性が非常に高いです。例えば、その96入力では、オブジェクトをグループでペアするのに悩まずにすみます。アンサンブルのさまざまな楽器を異なるスピーカー・ハングに割り当てることができたことにより、混乱することなく、全く新しい考え方を得られました。」

Hughes氏は、Prom 23に演奏した、ルーツ・レゲエ、ダブ、ダンスホールとソン、サルサ、ルンバ、アフロ・キューバン・ジャズとのブレンドを特徴とするHavana Meets Kingston を一例として挙げます。

「彼らがここに来る前に、WOMADへ聴きに行きました。そこでは従来のステレオ・システムが使用されていました。ボーカルの明瞭度が低く、明らかに各スピーカー・ハングが干渉していました。RAHでは、拍手が湧きおこり、発生する不協和音の中、少しダイナミックな入力して、ボーカルのレベルを上げることは常に困難でした。L-ISAを使用して、ボーカルを中心にし、その周りにアンサンブルを構成することができました。例えば、キーボーディストが小さな声で話したときに、5000人以上のオーディエンスが拍手したり叫んだりしても、その言葉がひとつひとつ明白に聞こえていました。通常のPAではあり得ないことです。」

また、コンサートは相当なモニター・システムを使用しており、非常にラウドなステージでした。通常では、ステージ・ノイズを上回るようFOHシステムを大きくしないといけないのですが、L-ISAテクノロジーではステージ上の出力をやっけるのではなく補助することができました。会場を圧倒し、観客の耳をつんざくような音を出すことなく、より簡単にクリアなミックスを行うことができました。

「各コンサートで、パフォーマンスの場所に適音を与えているので、指揮者の芸術的なビジョンを音圧で邪魔する心配はありません。指導者に聞こえるものを再現するだけです。しかも、L-ISAはとても簡単にできるのです。」

「L-ISAはエンジニアにとって完全に異なるワークフローであり、観客に新しいリスニング体験を提供します。」と、DeltaのPaul Keatingは結論として述べます。「一回L-ISAを聞いたら、絶対にステレオ・システムに戻る気になりません。これは間違いなくプロ・サウンド業界が向かう場所であり、これからが楽しみです。」