L-Acoustics Lシリーズ・コンサート・サウンドシステムが、フォレストヒルズ・スタジアムの音響制御の課題を解決
写真提供:Alive Coverage
2025年7月
ある人にとっての音楽は、別の人にとっての騒音であり、ギターがアンプにつながれた時代から続くこの構図は、今もなお変わっていません。しかし、人口密集地に位置する多くの会場がライブ音楽を積極的に受け入れるようになった今、ライブイベントと地域社会との調和をめぐる議論は、かつてないほど重要かつ意義深いものになっています。
その最前線に立つのが、ニューヨーク市クイーンズ区にある歴史あるフォレストヒルズ・スタジアムです。このスタジアムは全米テニスオープンの定期的な開催地としてに知られる一方で、ツアーシーズンには長年にわたり音楽ファンにとって主要な開催地でもあります。1967年にはジミ・ヘンドリックスがオープニングを務めたモンキーズ公演も行われました。このような都市型ライブ会場に共通するように、同スタジアムでも迫力あるライブサウンドと地域住民の快適さの両立という課題に長年取り組んできました。しかし、今年はフォレストヒルズ・スタジアムにL-Acoustics Lシリーズ・コンサートサウンドシステムが長期運用を想定して導入されたことで、音楽はより一層心地よく響くようになりました。

左図:Firehouse Productionsが提供した新しいL-Acoustics Lシリーズ・アレイを使用してパフォーマンスを行うPhish(写真提供:Alive Coverage)
右図:ステージ前面に配置された L-Acoustics KS28 サブウーハーと、その上に設置された Kara II フロントフィル(写真提供:Alive Coverage)
この新システムは、長年にわたり会場のAVベンダーを務めてきたFirehouse Productionsが提供と管理をしています。構成は、左右それぞれにL2×2台の下にL2D×1台を組み合わせたメインアレイを設置し、その両側にL2D×1台のアウトフィルを設置しています。さらに、フィルサウンドは20台のKara IIスピーカーから供給され、KS28サブウーハー16台が低域をコントロールしています。システム全体は4台のLA7.16と3台のLA12Xアンプリファイド・コントローラーでドライブされています。
結果は明白です。会場外の音圧レベルは、昨年のシステムよりも10~15dB低下しています。今シーズン現場でシステムエンジニアを務めるFirehouse Productionsのシステムエンジニア、ティム・フレイリー(Tim Fraleigh)氏は、この劇的な改善は伝説的なライブサウンドの第一人者、デイブ・ラット(Dave Rat)氏の推薦によるものだと述べています。ラット氏は、Lシリーズは過去数年間に使用されたK2システムと同等の音質を、よりコンパクトなエンクロージャーで、優れた音響制御と共に実現できると提案しました。「それは的確な判断であり、大きな成果でした。」とフレイリー氏は、会場外のでの音圧レベルについて述べています。「素晴らしい音は良い隣人関係を築くのです。」

写真提供:Alive Coverage
フレイリー氏はこの改善を、L2の固有のカーディオイド設計と、音の境界線を高い精度で予測したL-Acoustics Soundvisionソフトウェアのおかげだと考えています。また、L2のコンパクトなサイズのおかげで、視界を確保しながら音漏れを軽減するという主要目標を達成しました。「最初にシステムを吊り上げて、少し離れて見たときは、『これで本当に大丈夫なのか?』と疑いました。」と思い出します。「でも電源を入れて音を出した瞬間、その効果には驚かされました。」
Firehouse Productions のアカウントマネージャー、スティーブ・ゴードン(Steve Gordon)氏は、ツアープロダクションマネージャーとして長年現場を経験したのち、現在の役職に就いています。彼は、フォレストヒルズ・スタジアムとその近隣住民が直面していた問題は、ツアー音楽業界において普遍的な課題だと指摘します。「私たちはいつも『どうして音を出してはいけない場所でロックショーをやろうとしているんだろう?』と自問してきました。」と彼は苦笑します。「でもそれが現実なのです。エンジニア、観客、そしてアーティスト、誰にとっても難しい課題です。なぜなら、音の制約で体験が変わってしまうからです。私は世界中でこれに遭遇してきました。」しかしゴードン氏は、L2の「まとまりの良さ」こそが、この会場に最適な解決策となった理由だと指摘します。「Lシリーズの素晴らしい点のひとつは、大音量で鳴らさなくても十分にインパクトがあることです。これが本当に、音圧レベルのコントロールに役立っているのです。」

写真提供:Brian Kwon

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フレイリー氏もそのことを認め、「FOHミキサーとして、インパクトを出すために音量を上げる必要性を感じません。それが今シーズンの運営を本当に楽にしてくれたのです。」と付け加えます。EDMの影響を受けたインディーロックバンド、ブロック・パーティー(Bloc Party)の5ヶ月に及ぶシーズンの初公演も、まさにその通りでした。このシーズンには、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)、ザ・ブラック・キーズ(The Black Keys)、フィッシュ(Phish)、マムフォード・アンド・サンズ(Mumford & Sons)、アラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)らも出演します。「低音域でさえ、ガイドラインを快適にクリアしています。」と彼は言います。
まさにそれを実感したのが、会場のプロダクション・マネジメント会社、ファンクション・オブ・グラビティ(Function of Gravity)社のプロダクション・マネージャー、ブライアン・バージ(Bryan Berge)氏です。シーズン初日のショーの際、彼は路上に立ってその効果を実感しました。「『これだけなの?』と、みんなが言っていましたよ。」と嬉しそうに振り返ります。騒音対策のコンサルティングを依頼されたバージ氏は、今シーズンは、音量に関する基準値がさらに厳しくなっていたにもかかわらず、音圧レベルが明確に低下したが、聴感上のインパクトはまったく損なわれなかったと、L2が大きな効果をもたらしたと話します。さらに、L2がより包み込むようで、指向性の少ないリスニング体験をもたらし、観客の音楽への没入感を深めていると説明します。「スピーカーのような演出要素が目に入ると、無意識のうちに『現実に引き戻される』感覚があるのです。しかし、Lシリーズには何か特別なものがあります。その小型サイズと優れたエンジニアリングによって、まるでスピーカーが『存在していないように感じられます。音楽そのものと直接つながっているように思えます。それは本当に満足度の高い体験です。」

左図:ステージモニターとしてL-Acoustics X15 HiQウェッジを使用するDr.Dogのパフォーマンス(写真提供:Brian Kwon)
右図:EDMのデュオJOY(Anonymous)がL-Acoustics「Texasヘッドフォン」(片側3台のKara IIにSB18を1台ずつ設置)をDJブースのモニターとして使用しています。(写真提供:Mike Kim)
今年の公演は当初許可が下りなかったものの、関係者間の合意により市が歴史あるこの会場での公演開催を承認したことで、コンサートファンは歓喜に沸いています。その大きな要因は、新しいL-Acoustics Lシリーズ・サウンドシステムの導入です。このシステムにより、音楽はまさに必要な場所に届けられます。
「フォレストヒルズ・スタジアムでは常に、ファンの皆さんに忘れられない瞬間を提供することを目指してきました。そしてL-AcousticsのLシリーズ・システムによって、まさにそれが実現できています。」と、この象徴的な屋外会場を運営するThe Bowery Presentsのゼネラルマネージャー、ジェイソン・ブラント(Jason Brandt)氏は語ります。「この最先端のサウンドテクノロジーにより、会場内で音楽が没入感を保ち、観客はより深いレベルで音楽とつながることができます。そして同時に、周囲の地域社会にとっても『最高の隣人』となることを目指しています。これからも素晴らしい音楽を楽しめるシーズンが続くことを楽しみにしています。」

左図:各サイドにL-Acoustics L2×2、L2D×1のメインアレイ、さらにL2D×1のアウトフィルを追加(写真提供:Drew Gurian)
右図:L-Acoustics Kara IIスピーカーがディレイとフィルカバレッジに使用されています(写真提供:Drew Gurian)



























