ザ・ハッスルのバーエリアには、バー上部にヨークマウントされたL-Acoustics X12が設置され、天井に取り付けられたKS21サブウーハーで補強されています。

多目的に利用できるナイトクラブは、コンパクトなK3ラインソースシステムを英国で初めて導入し、多彩で包み込むようなサウンド体験を提供

2022年6月
昨年8月にオープンしたThe Loftsは、イギリス、ニューカッスル・アポン・タインの活気ある街の中心部に位置し、有名なアーティストを迎え、街で最もにぎやかな夜を演出する新しい「スーパークラブ」として既に高い評価を得ています。1,500人収容のこの会場は、ディレクターのジョン・ダンス(John Dance)、マーティ・スミス(Marty Smith)、ロブ・シーマン(Rob Seaman)が共同で設立したもので、彼らはバレアリック諸島やその他の地域での豊富なナイトライフの経験が、ザ・ロフトの理念を形作っています。この理念は、会場全体に優れたカバレッジとクリアな音声を届けるためにAdlib社が設計・設置した、この体験全体の重要な部分を担うL-Acoustics K3にもつながります。

「クラブのオーナーは、共通の知人からAdlibを推薦されたことをきっかけに、我々に声をかけてくれました。」と、Adlibのザ・ロフト担当プロジェクトマネージャーであるニック・ホワイトヘッド(Nick Whitehead)氏は振り返ります。「彼らは、野心的でありながら、非常に明確なビジョンを持って我々のところにやってきました。彼らは、イギリス北東部で最高のクラブを作りたいと考えており、以前からL-Acousticsの使用経験があったことと、会社として常にオーディオ技術の最先端を走っていることから、このブランドを使いたいと考えていました。私たちは、彼らのこの計画をサポートし、この会場に合わせたL-Acousticsのシステムを導入することができることをとても喜ばしく思いました。」

最初の打合せと現場訪問はすべて2021年の夏の始めに行われ、正式なオープンは8月末の三連休に予定されており、BBC Radio 1で有名なDJ、ピート・トング(Pete Tong)がThe Loftsのオープニングナイトでパフォーマンスすることになっていたのです。Adlibチームは 4週間という短い期間で設置を完了させる必要があったのです。

「テレビで宣伝が流され、看板がニューカッスル市内に掲示され、チケットは完売でピートのプライベートジェットも予約されるなど、オープニングナイトの前は大騒ぎになりました。要するに、失敗は許されなかったのです。すべてが完璧でなければならなかったのです!」 と、ホワイトヘッド氏は語ります。

ホワイトヘッド氏は、プロジェクト・デザイナーのティム・ロビンソン(Tim Robinson)氏と協力して、会場の5つの異なるスペースそれぞれに最適なシステムを設計しました。

3階建ての「The Lofts」の上層階は、メインの「Plant Room」、ニューヨークスタイルの「Harlem」、キャバレースタイルの「Speakeasy」の3つの大きな部屋で構成され、いずれも広いダンスフロアとバーを備えています。

プラント・ルームのメインシステムはL-Acoustics K3による2つのハングとそのすぐ後ろにKS28サブウーハーによる2つのハングで構成されています。

L-AcousticsのK3とKS28のメインハングに加え、A10ディレイとX12アウトフィルが設置されています。

プラント・ルームのシステムは、5台のK3の2ハングと、その後ろにタイムアライメントが取られたエンドファイアー構成の3台のKS28が2ハング設置されています。ディレイはA10を2台、X12をアウトフィルとして使用しています。バーエリアには、天井に埋め込まれたX8キャビネット6台とKS21サブウーハー2台が設置されています。

「ナイトクラブを設計する場合、各コーナーにポイントソースを山積みにして、それで終わりにするのがデフォルトかもしれません。」とロビンソン氏は言います。「オーナーは設計段階から私たちと積極的に関わり、この点を改善したいと考えていたことは幸運でした。L-AcousticsのSoundvision 3Dファイルを使って、異なるキャビネットを異なる位置に配置した場合の効果、相互作用、そして観客の体験がどのように変わるかを見せながら、アイデアを共有しました。」と語ります。

ライブ感を重視して、各クラブのDJブースに焦点を当てることがデザインの重要なポイントでした。音は常にその焦点から発せられ、後続のキャビネットは必要に応じてディレイされるようにしたかったのです。その結果、非常に一貫性のあるエクスペリエンスを作り上げることができました。

ロビンソン氏によると、特にプラント・ルームに設置されたK3は一つの明確なポイントを持つことで、「ものすごく良く鳴る」とのことです。「DJブースからどこを向いても他のスピーカーは見えません。すべてが同じ方向を向き、タイムアライメントが取れ、一貫して機能しています。」

ハーレム空間は、L-Acoustics Kara IIとSB18による2つのフライング・アレイを使用しています。

音響的にトリッキーな空間であるハーレムでも、同じアプローチがとられています。この部屋は、DJブースのあるダンスフロアとバーエリアの2つに分かれています。DJブースのあるダンスフロアは、ほぼ円形の大きな部屋で、ガラス製のタワーと、床から天井までの大きな窓があり、一端は20m近い高さになっています。バーエリアは、低いアーチを通じてダンスフロアとDJスペースに隣接しています。

「3つの空間が破壊的ではなく、首尾一貫して相互作用するようなシステム設計を心がけました。全てはハーレムの窓の前の、4台のKara IIと3台のSB18による2つのフライング・アレイから始まります。ハーレム空間のバーに進むと、2つは電気的に位置を合わせてありますが、セパレーションアーチの上に仕切り壁があるため、ほぼ完全に別の音響空間として扱いました。A10iはフォーカス2台、ワイド1台と、KS21は中央4台のアレイを使用しました。バーの一番奥には、ディレイシステムとして1台のX15が柱の裏に取り付けられています。」とロビンソン氏は説明します。

120人収容のスピークイージーには、A10i FocusとA10i Wideの3つのクラスターと、3台のKS21iを備えています。

中2階には、よりプライベートな空間として、DJブースを備えたアーティスト用の楽屋「The Electric」があり、アーティストやスタッフ、マネジメントが一般客から離れてくつろげるスペースになっています。ジ・エレクトリックのバーエリアでは、4台のX8がバーの上部にカーブに沿って設置され、客席側をカバーしています。さらに2台のX8は、専用のステレオDJモニタリングに使用されています。

「このセットアップを採用した理由の一つは、客席を均一にカバーしながらも、バーテンダーの顔に当たらないようにすることでした。そのほうが彼らの健康に良いだけでなく、バーに立って飲み物を注文するとき、カバレッジ範囲から外れるので、注文を明確に伝えることができます。」とロビンソン氏は付け加えます。低域の拡張は、X8と並んでバーエリアの天井に設置された2台のSyva Subによって行われます。

1階の「ザ・ハッスル」は、バー、レストラン、ディスコラウンジが建物全体に広がっています。バーエリアは昼間のスペースであり、食事の場所でもあります。また ザ・ロフトのフィーダーバーでもあるので、2階のシステムのレベルに合わせて、BGMからそれなりに高いレベルのフォアグラウンドミュージックまでこなせるシステムが必要でした。もう一方は、ベルベットの座席とDJブースの両方を備えたブティッククラブで、もう少しダンスフロアのシステムが必要でした。」とロビンソン氏は言います。

「天井が少し低くなるエリアには、コンパクトなX8キャビネットを設置しました。」

The Hustleのメインシステムは、片側2台のA15と低域をKS28で構成し、さらに部屋の奥にディレイとして天井取り付けのA10iが設置されています。コアキシャルX12キャビネットは、バーの上からヨークマウントされています。これらはすべて同一平面上にあり、天井に取り付けられたKS21サブウーハーによって補強されています。「天井が少し低くなるエリアには、コンパクトなX8キャビネットを設置しました。ザ・スナッグ(The Snug)はバーから少し離れた小部屋で、2台の5XTとSyva Subを備えています。」とロビンソン氏は語ります。

オーディオシステムのバックボーンは、クラウド管理可能なQ-Sysコントロールプラットフォームです。これにより、オーディオはAES67ネットワーク上で会場内に配信され、あらゆる信号をどこにでもルーティングすることができます。「プロジェクトの当初、クライアントからは、部屋から部屋へのオーディオ・ルーティングが必要になるという話はありませんでした。各部屋にDJブースが設置されているのですからその必要はないでしょう。しかし、その要件が必然的に表面化したとき、非常に簡単に対応することができました。同様に、フロア間のルーティングも可能です。ザ・ハッスルは、ジ・エレクトリックと同様、2階のどの大きな部屋からも音声を受信することができます。The Electricは楽屋になりますので、ラジオ局のように使うことができ、別の部屋の仲間たちのパフォーマンスを聴くことができます。」とロビンソン氏は説明します。

ザ・ハッスルの施工過程で、ある業者がスポーツ試合の中継を行うためのテレビシステムの設置を依頼されました。テレビから音が出るというのが、彼らの当初の意図でした。しかし、Adlibチームは現場の業者と密接に連携し、Blustream IPベースのマトリックスの使用を提案し、Danteを使ってQ-Sysシステムに音声をルーティングし、そこからL-Acousticsのキャビネットに送ることで、より満足のいく結果を得ることができました。

ロビンソン氏は、Adlib と L-Acoustics の関係は、納期が厳しい複雑な設備に付加価値を与えていると指摘します。「メーカーとの関係は本当に大切です。「L-Acoustics公認システムインテグレーターとして、私たちは彼らが提供するすべてのリソースを活用して、このように素早くインストールを行うことができました。」

The Loftsのようなナイトクラブでは、そのエンターテイメント性のほとんどが音によって決まるため、優れたサウンドは非常に重要です。「没入感ある、包み込まれるような体験 が必要なのです。それは、ヘッドルームに余裕があるため、やろうと思えばできますが、爆発的な音量にする必要はありません。」とロビンソ氏は結論付けています。「ザ・ロフトの音は大きいけれどとてもクリアで、苦痛や不快感がないとの声を多くいただいています。必要なことは間違いなく実現できています。ザ・ロフトのオーナーの一人であるロブ・シーマン(Rob Seaman)氏は、プラント・ルームのシステム導入直後に、会場のレジデントDJであるJonny Burn氏を訪ねました。部屋に入ると、ロブは両手を後ろに回して立ち、じっと耳を澄ましていました。そして『ジョン、これを聞かなければなりません!』と叫んだのです。」

「このデザインは素晴らしい共同作業の結果であり、技術的な観点からも、国内で一番とは言えないにしても、イギリス北東部で最高のナイトクラブと言えるでしょう。この素晴らしいプロジェクトに携わり、この並外れた会場にL-Acousticsの音響特性をもたらす機会を与えられたことを光栄に思っています。」


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