広島国際会議場は、1989年7月に開館した、ホールを備えた地域を代表する歴史のあるコンベンションセンターです。2023年5月に開催されたG7広島サミットの各国首脳記者会見会場にもなりました。エンドステージとアリーナステージ形式に可変でき、1,504名を収容できるフェニックスホールにおいて、2023年12月から2024年1月までの短い期間で音響改修が行われ、スピーカーシステムとしてL-Acousticsが採用されました。

エンドステージ形式 写真提供:広島国際会議場

アリーナーステージ形式  写真提供:広島国際会議場

今回、広島国際会議場の舞台音響照明管理業務を委託されている株式会社 篠本照明 清水麻紀氏、そのグループ会社で、管理業務、またはPAオペレーターとしても広島国際会議場でよく仕事をされている制作、音響、映像を行う株式会社 SHINOMOTO-SE 清水弘樹氏、そして今回の音響改修の設計と施工をされたジャトー株式会社 中国営業所 高畠正博氏にお話を伺いました。

改修を行ったきっかけは、以前のスピーカーが古くなり十分なメンテナンスが行えなくなったことです。明瞭度があまり良くなく、場所によって音圧が均一でない場所があったとのこと。そして、特にサイドバルコニー席はエリアカバーができていない場所もあったそうです。このホールでは、クラシックコンサートなど様々なイベントが開催されますが、その中でも国際会議や学術会議などの講演会で使用されることが多く、何を話しているかが明確に聞き取れる、音の明瞭度を最重要視しています。

そのような状況で次期スピーカーシステムの選定が始まりました。清水弘樹氏は、ARCSやdV-DOSCを使用したことがあり、以前からL-Acousticsが持つ明瞭度の良さは理解していました。また、このホールを訪れるPAオペレーターの意見も聞いた上でL-Acousticsを推薦し、ベステックオーディオにどの機種がこのホールにベストなのかを相談しました。また、L-Acousticsを導入したかったという気持ちが強かったのもあったそうです。

改修にあたり、いくつかの要望が出されました。それは、「プロセニアム上部のアクリルの反響板に干渉しないようホール全体を均一にカバーできるようにすること。」「アリーナステージ形式の場合にステージが張り出し、客席が後方に下がるためエリアカバーの変更をスムーズに行えるようにしたい。」「そして、バルコニーをしっかりカバーできるスピーカーを設置すること。」というものでした。べステックオーディオは、要望に応えるためにSoundvisionを使いサウンドデザインを始めました。

そのデザインは、反響板の影響を避けるため、プロセニアムに9台のKiva IIをL,C,Rに配置し、1階席と2階席をカバーしています。3階席は4台のKara IIをL,Rに配置してカバーしています。


1Fと2F席をカバーする9台のKiva II  写真提供:広島国際会議場

3F席をカバーする 4台のKara II

アリーナステージ形式の場合は、ステージが前方に張り出すエリアを狙っているKiva IIをスナップスイッチのON/OFFで簡単に対応できるようKiva IIの角度を設定しました。さらにアリーナ ステージ形式時に客席がステージ後方に現れるため、そのエリアをカバーするために3台のX12を配置しています。
バルコニーのステージに近い席はX12を1台と遠い席向けにX15 HiQを1台配置し、明瞭度と音圧を確保しています。「デザインの提案に用いられたSoundvisionは、視覚で理解しやすく判断材料としてとても役に立った。」とのコメントも聞かれました。
また、1台のKS21の上に3台のA10 Focusをグランドスタックした移動システムとステージモニターのX12も導入されています。すべてのスピーカーは、LA4Xで駆動されています。
そして、モニターとして音響調整室に108Pが設置されています。「L-Acousticsは全てのスピーカーが同じ音色がするので、調整室の中でもホールの音の状況が判断し易くなった」と、おっしゃっています。

実際に工事が始まった段階でスピーカーの設置場所に図面に書かれていなかった鉄骨の柱が見つかり、一部のスピーカーに干渉することがわかったそうです。ジャトーの施工チームはべステックオーディオと協力し、スピーカーの取付位置と角度の変更を行いこの問題を解決したそうです。

移動システムのA10 Focus / KS21とX12

最後に導入後のご感想を伺いました。
「とっても楽になりました。本番まで時間がない現場が多いのですが、今まで行っていたアウトのOneTwoチェックをすることもなく、使うマイクのインプットチャンネルでハイパスフィルターを入れて、気になるピークがあったら切ればいい。それだけです。会場内を聞いて回っても、どの場所も同じ音色で均一な音圧です。そしてハウリングしない。」また、要望を出すとすぐに対応したべステックオーディオのサポートにも感謝していただけました。
「いままで移動用のスピーカーが無かったので、音楽イベントの時はスピーカーが持ち込まれていました。学会などの講演会以外の音楽系の催しでも、会館のスピーカーで対応できるようになったことがとてもうれしいです。」

右から:清水麻紀氏、清水弘樹氏、高畠正博氏

本日はお忙しい中ありがとうございました。

広島国際会議場
〒730-0811 広島市中区中島町 1-5 (平和記念公園内)

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