中国の雑技団が先進的なL-ISAとAmbianceエコシステムを導入
2025年12月
中国・安徽省(あんきしょう)の巣湖(そうこ)のほとりで、伝統とテクノロジーの驚くべき融合が、雑技芸術を再定義しています。安徽百戯城雑技劇場(アンホイ・バイシチェン雑技劇場)は、この地域で最も技術的に洗練された舞台芸術施設の一つとなりました。ここには、L-Acoustics公認プロバイダーであるRightway Audio Consultants(RAC)が設計・設置した、Ambianceアコースティック・システム統合型のL-ISA空間サウンドシステムが導入されています。
1,320席のこの会場は、60年にわたり世界50カ国以上で公演を行い、中国の舞台芸術を代表する安徽雑技団の本拠地となっています。40,800平方メートルの新しい施設は、その伝統に匹敵する先進的なインフラを備え、グリーンビルディング評価基準で三つ星を獲得しました。これにより、安徽省で初めてサステナビリティの認定を受けた舞台芸術施設となりました。
この設備の特筆すべき点は、単にテクノロジーを導入したことだけではありません。RACがいかにして、L-ISAのオブジェクト・ベースの空間音響とAmbianceのリアルタイム音響制御を統合し、中国でも有数の意欲的なステージデザインを誇るこの劇場特有の課題を解決したか、という点にあります。
中国初の「デュアルモード・ステージ」が求めるL-ISA空間音響
この劇場のテクニカルスペックは、さながらエンジニアリングへの挑戦状のようです。中国最大級となる一体型回転舞台は、36メートルの高低差をわずか90秒で移動し、水平から垂直へとその向きを変えます。さらに36基のコンピューター制御によるワイヤー・リギング・システムを備えたこの舞台は、プロセニアム形式とイマーシブ形式を切り替えられるデュアルモード設計となっており、これは中国のプロフェッショナル劇場施設として初の試みです。
問題は空間音響を使用するかどうかではなく、いかに効果的に配置するかでした。「複雑な空中技巧とダイナミックなステージングを伴うアクロバティックなパフォーマンスでは、正確な音像定位と空間ポジショニングが不可欠です」と、RACのシステム・エンジニアであるワン・ジャンホア(王江華)氏は説明します。「従来のステレオSRでは、空間を飛び交うパフォーマーたちの三次元的なリアリティに到底追いつくことができないのです。」
システムに求められたのは、単に音を増幅することではありませんでした。観客の頭上を舞うパフォーマーの動きという現実に合わせ、音を空間内に正確に配置することだったのです。

Ambianceが実現するリアルタイムの音響制御
Ambianceテクノロジーは、舞台芸術における最も根深い課題の一つ、「同一の物理的空間において、多種多様なパフォーマンスそれぞれに最適な音響環境を作り出す」という課題に取り組んでいます。
24台のマイクロフォンを効果的に配置することで、ホール全体の空間音響エネルギーを精密に計測します。これらの信号はL-ISA Processor II内のL-ISAルームエンジンへと送られ、劇場の残響特性をリアルタイムで制御可能にします。「演目のニーズに応じてホールの残響時間や音場の特性を柔軟に調整でき、観客を常に変化するサウンドスケープの中に没入させ続けることができるのです」と王氏は説明します。
かつては高額な建築改修や煩雑な機械的ソリューションを必要としたことが、今ではボタンひとつで瞬時に行えるようになりました。台詞劇に適した演者を身近に感じるドライな特性から、音楽パフォーマンスのための豊かで響きのある特性へと、瞬時に変化させることができるのです。

A15iとKS28が180°の観客席に正確なカバレッジを提供
イマーシブオーディオ構成として、正面の「L-ISAシーン・システム」には5つのフライングアレイが採用されています。各アレイは5台のA15i Focusと1台のA15i Wideで構成され、その中央にはカーディオイド構成でフライングされた4台のKS28サブウーハー2組が配置されています。さらに、劇場の180度にわたる広い客席エリアをカバーするため、片側につきA15i Focus 3台とA15i Wide 1台で構成されたエクステンション・アレイが左右に配置されています。
サラウンド・システムには34台のX8エンクロージャーと2台のX12スピーカーで構成されています。さらにオーバーヘッド・システムとして13台のX12スピーカーを追加しています。劇場の天井に設置された4台のSB18サブウーハーがサラウンドとオーバーヘッド・システムを補完し、完全に包み込まれるような音響空間を作り上げています。
これは、オブジェクトベースミキシングに必要な精度を維持しながら、困難な視線条件においても均一な音の分布を優先する、秩序あるカバレッジ・アプローチです。複雑なワイヤー・パフォーマンスの最中、ロープの摩擦音、衣装が空気を切る音、着地時の衝撃音など、それぞれ異なる聴覚要素をレイヤー化して配置できます。アクロバットパフォーマーの動きの軌跡を、正確な音の移動軌跡へと変化させます。
L-Acousticsエコシステムの完全な統合
本システムでは信号伝送にAES67ネットワークオーディオプロトコルを採用し、音声・映像・照明の各要素を統合制御システムで一元管理しています。この高度な統合システムは、音楽と照明、映像がパフォーマーの動きと緊密に同期するパフォーマンスにおいて不可欠な役割を果たしました。
BlackTraxのリアルタイム・トラッキングテクノロジーは、6D位置情報をネットワーク経由でL-ISAシステムに送信します。パフォーマーのリアルタイムな位置に合わせて空間上の音響オブジェクトの位置をシミュレートすることが可能になり、パフォーマンス体験にさらなる次元を加えています。
「空間音響がライブ・パフォーマンスの状況にダイナミックに反応します」と、安徽百戯城雑技団のハウス・サウンドエンジニア、ツイ・ヤンカン氏は語ります。「その結果、私たち劇場の音響チームは、あらゆる規模において没入感のある音響体験を創り出すことができるのです。」

芸術を支えるテクノロジー
劇場のプレオープン初日には、伝統芸術と空間音響テクノロジーの融合を体験しようと3,000人を超える来場者が訪れました。システム導入以来、伝統的なアクロバット演目から、大規模なSRを必要とする現代的な演出まで、多岐にわたるプログラムにおいて安定したパフォーマンスを発揮し続けています。
「L-ISAとAmbianceを併用し、マルチチャンネル・システムを設計・最適化することで、この種の会場では不可能だったレベルで音響と空間音響を制御できるようになりました」とツイ氏締めくくります。「このシステムは従来の限界を打ち破り、音と動きが完璧に調和する精密なコントロールを実現させてくれたのです。」
安徽雑技団にとって、このテクノロジーは最高の音響システムに求められる役割を果たしています。それは、システム自体の存在を感じさせることなく、パフォーマーと観客が芸術そのものを通じてつながることを可能にすることです。観客にとって、その結果は忘れがたい体験となります。重力を超越するアクロバットの演技を「見る」だけでなく、三次元でその動きを「聴く」ことができるのです。



























