Photo Credit: Lance Gerber

この生きたアート・インスタレーションは、L-ISAのユニークな多次元性を利用して、約7600メートルのPVCチューブの円形トンネルに共鳴するサウンドエレメントを加え、アーティストが現在行っている水と砂漠の歴史の探求を覗き込む視覚的スペクタクルを表現しました。

2022年7月 今年4月、カリフォルニア州インディオにあるエンパイア・ポロ・クラブの敷地内で、アーティスト、クリストファー・チェハスキー(Christopher Cichocki)が驚くべきインスタレーションを考案しました。5階建ての高さの『Circular Dimensions x Microscape』は、約7600メートル以上のPVCチューブで構築されており、アーティストが現在取り組んでいる水と砂漠の歴史の探求を視覚化した光景を描かいています。バンドシェル型のパビリオンは、科学者とアーティストがソルトン海の水、塩、フジツボ、藻類を顕微鏡で操作し、パビリオンの「核」の中にリアルタイムで投影する実験的な「ビデオ・ペインティング」を生成する生きた実験室となっています。

L-AcousticsのL-ISAイマーシブオーディオ技術により、美しいビジュアルに負けない、素晴らしいサウンドも楽しむことができます。UCLAの演劇学部でサウンドデザインを教えるサウンドデザイナーのジョナサン・スナイプス(Jonathan Snipes)氏と、カリフォルニア大学サンディエゴ校の波動合成の教授であるボビー・マケルバー(Bobby McElver)氏が、トンネル内部に合計60台のスピーカーを配置しました。57.1システムでは、L-Acoustics X85XTコアキシャル・スピーカーを4台のSB18サブウーハーで補強し、さらに数台のKiva IIがミニ・ラインアレイとしてトンネル外周にマルチチャンネル体験のモノラル版を提供しました。

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また、システムが今年のISEとInfoCommで正式発表された高効率の新しいアンプリファイド・コントローラーLA7.16iによってドライブされたことも特徴的です。Milan-AVBのシームレスな冗長性を備えた2Uの筐体に16×16のアーキテクチャを搭載し、16の出力チャンネルはそれぞれ最大1300W(8Ω)、1100W(4Ω)の出力を実現しています。

L-Acousticsのアプリケーションプロジェクトエンジニアであるカルロス・モスケラ(Carlos Mosquera)は、「サステナビリティを重視した新しいLA7.16iにより、この展示では4台のアンプリファイド・コントローラーで、8Uのラックスペースを占有するだけで済み、LA4XやLA12Xを使うよりも物理的に大きなスペース削減につながりました。」と語っています。「また、LA7.16iは、他の機種に比べて消費電力が大幅に少なく、発熱量も半分以下なので、ビデオ機材も収容されているステージ下のテックルームが、カリフォルニアの砂漠の中のオーブンのように感じられることはありません。さらに、新しいアンプリファイド・コントローラーのMilan-AVBソリューションにより、非常に高速で効率的な構成が可能です。チャンネル数が多いにもかかわらず、設定やキャリブレーションに30分もかかりませんでした。RAT Soundチームのおかげで、LA7.16iの理想的な試験導入ができました。」

「私が通常演奏する音響では、3次元的な空間化が非常に重要です。」と、ポーランド語で「沈黙」と訳される名字のアーティスト、チェハスキー氏は説明します。「マケルヴァーさんとスナイプスさんは、私がよく一緒に仕事をしているサウンドデザインのプロフェッショナルで、彼らはL-ISAの技術がCircular Dimensionsの3次元空間表現を次のレベルに引き上げるポテンシャルを持っている、と勧めてくれました。結果的には、私が設計したバンドシェル型の設置環境がそれにぴったりだったのです。」

毎晩数時間のDJライブを行ったチェハスキー氏は、インスタレーションとパフォーマンスのために、グレゴリオ聖歌や環境保護活動家グレタ・トゥンバーグのスピーチの録音など、自然音やその他の要素を含む数時間分のオーディオコンテンツを作成しました。昼間はアンビエント、夜はハイエナジーなダンスフロアへと変化する実験的なセットは、すべて8チャンネルで構成され、Ableton Liveを通じて演奏されました。

進化し続けるCircular Dimensionsのオーディオコンテンツのライブラリーは、オープン当日まで正式に完成されず、ステレオフォーマットでしか提供されなかったため、「2つのチャンネルだけで、どうやって魅力的で没入感のある体験を即座に作り出せるのか?」という疑問が生じました。

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このイベントの準備のため、スナイプス氏とマケルヴァー氏は、X8と5XTのエンクロージャーも多く使用しているカリフォルニア州ウェストレイク・ビレッジのL-ISAスタジオで、モスケラとともに数日間かけて今回のシステムデザインを作成したのだそうです。

「マケルヴァーさんとスナイプスさんは、チェハスキーさんが最終的にどのようなトラックを使用するか分からなかったので、パーカッシブ、アンビエント、メロディックなどさまざまなトラックを選び、アーティストがL-ISAで空間全体の音の動きをコントロールする方法を数多く考え出しました。」とモスケラは回想します。「まず、チェハスキーさんがiPadから意図的にトリガーできるスナップショットのプリセットを作成し、PVCトンネル内のスピーカーの周りでオーディオを特定の方法で動かすようにしました。また、これらのエフェクトの強弱は、iPadのスライダーバーでウェット/ドライミックスのようにコントロールすることができました。次に、二人は、オーディオの軌道を促す「リアクティブ」エフェクトを複数作成しました。例えば、すべてを中央に送ったり、オーディオを左右に波打たせるパンニングを行ったりするなどです。これは、再生マテリアルが、特定の周波数やそのほかのしきい値を超えると自動的に作動するものです。この2つ目のアプローチにより、アーティストが手を加えなくとも、実に面白い、クリエイティブなムーブメントが生まれました。2つのアプローチを組み合わせることで、チェハスキーさんは、どんなマテリアルでも、たった2つのチャンネルをL-ISAの何十もの出力に関連付けることができ、非常に素晴らしい聴覚体験を生み出すことができました。」

チェハスキー氏がライブミキシングしている間に、スナイプス氏とマケルヴァー氏によって処理されたオーディオコンテンツが、現場の大きな最終システムを通じて流れていきます。「チェハスキーさんはビジュアルアーティストで、オーディオコンテンツを提供することはあっても、アレンジすることはなかったのです。彼は、DJのようにその場でコンテンツを引き出すので、軌跡の情報を事前にオーサリングすることはできませんでした。」とマケルヴァー氏は説明します。「その代わりに、スナイプスさんと一緒には、彼が必要とする特定のサウンドやリズムを取り出せるようなツールを作りました。その中にはリアクティブなものもあり、すべてがリアルタイムでスペクトルと音色の分析を経て、他のサウンドや リズムにつなげられるようにしました。」

マケルヴァー氏はその分析にCycling 74のMax 8を使用し、L-ISAコントローラーのスナップショット機能を使用してマクロを設定しました。そうすることで、L-ISA Processor IIで自動再生される残りのコンテンツと同時に、チェハスキー氏はオーディオコンテンツの特定のビットを即座に呼び出すことができました。

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「チェハスキーさんは、iPad上のL-ISAコントローラーでさまざまなオーディオオブジェクトの位置を確認し、私たちが用意した強弱スライダーを使って、他のオーディオソースの速度と強度を変えることができました。」とマケルヴァー氏は語ります。「『軌道ジェスチャー』という空間で音を飛ばすことができましたが、その後、システムは自動モードに戻るので、音が途切れることはありませんでした。」

スナイプス氏は、自分をこのプロジェクトの「ミドルウェア担当」だと言い、チェハスキー氏がオーディオを追加・変更しながらも再生を停止させないための手段を作り出したと説明します。「演奏とその強さ、その他のパラメーターをコントロールできるスイートスポットを探す他、私はランダムなものとリアクティブなものを含め、常に音の動きがあることを確認してあげました。「L-ISAのおかげで、バラバラの音源を一カ所に集めて、手動的に、あるいは自動的に移動させることができました。L-ISAはそのためのツールを備えており、砂漠の環境でもできるほど堅牢です。」

『Circular Dimensions x Microscape』を体験して感動したのは観客だけでなく、チェハスキー氏自身も同様にその結果に感銘を受けたそうです。「L-ISAで成し遂げたことは壮大というほかありません。トンネルを歩きながら音の動きに驚く人々を見てドキドキしました。音響と映像が同レベルになったのです。これはアート・インスタレーションの世界では非常に注目に値することです。」

Photo Credit: Lance Gerber

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