2025年12月
フランスのコンサートホールやアリーナを巡る新たな全国ツアーで再びステージに立つダヴィッド・アリデーは、毎晩3,000~6,000人のファンを集めていす。エネルギッシュなポップロック、モダンなエレクトロサウンドや親密なバラードをフィーチャーしたショーは、明瞭度、制御性、ダインミックレンジの面で高いレベルが求められました。豊富なレパートリーに必要な精密を実現するために、FOHエンジニア兼ミキサーであるステファン・プリッソン(Stéphane Plisson)氏は、MAWIPのサポートを受け、Potarが提供するL-Acoustics Kシリーズのサウンドシステムを選びました。

プリッソン氏は、アリデー家との関係は長く、2006年の故ジョニー・アリデー『Flashback Tour』のミックスを担当した経験もあります。今回のツアーは、息子のダヴィッド・アリデー本人から直接依頼を受けました。プリッソン氏が共同経営するMAWIPが、包括的な音響パッケージを提供しました。「1987年の初期モデル以来、私はほぼL-Acoustics一筋でやってきました」と説明。「DOSCとV-DOSCから、K1, K2, K3、そして最新のLシリーズまで、ブランドの進化を注視してきました。ミックスを担当するツアーでは、必ずL-Acousticsを選びます。」

アリーナとゼニット特有の音響課題を克服

様々なツアー会場はそれぞれに異なる音響的な課題をもたらしました。ゼニットと呼ばれるコンサートホールと、中規模のアリーナは、高い反射率を持ち、客席の形状の変動と予測しづらい低域の挙動で知られています。高精度のFOHミックスが求めらるダヴィッド・アリデーのショーでは、安定したSPL、一貫したステレオイメージ、そして会場全体に均一でパワフルな低域が不可欠でした。

「ゼニットの低域は難しい。でもそこが楽しいのです」とプリッソン氏は語ります。「私は低域の振動を感じてミックスしますし、それを観客も感じ取ってくれます。重要なのは、低域のビルドアップ、キャンセリング、音が大きいホットスポットを避けることです。」 また多忙なツアースケジュールを支えるため、システムは素早く設営・調整でき、会場クルーや環境が変わっても毎回同じ結果を得られる必要があった。

緻密に構成されたKシリーズシステム

これらの要件を満たすため、プリッソン氏とMAWIPはL-Acoustics K2を中核としたシステムを設計しました。メインアレイは、片側14台のK2を配置し、広い帯域幅、高いヘッドルーム、そしてダヴィッド・アリデーのダイナミックなボーカルやアレンジに不可欠な繊細な中域表現を確保しました。吊り点に制約がある会場では12台、10台に縮小しつつも目標カバレッジを維持しました。

低域は、6台のKS21がオムニ構成でフライングされ、6台のKS28が60Hz のエンドファイア構成で地面に設置されました。明瞭で指向性の高い低域を前方に投射しつつ、ステージ背面への回り込みを抑制しました。 8台の K3がアウトフィルを担当し、6台のKara IIがインフィルとして近距離エリアを補正。3台のA15 Wideと3台のX8がステージ前端のエリアに滑らかな音色を提供しました。

システムはLA12Xアンプリファイド・コントローラーで駆動され、Potar が製作した専用ラックがネットワークと電源接続を効率化。プロセッシングは、P1プロセッサを中核とする完全冗長構成のMilan-AVBネットワークを通じて行われます。P1はMidas Pro HD96からのAES信号を受信し、AVBを介してLA-RACK II AVBとLS10スイッチへオーディオを分配しました。

会場ごとに一貫した音響特性を確保するために、音響チームはL-Acoustics Soundivisonを活用しました。Soundvision を用いた事前シミュレーションにより、リギング、カバレッジ、SPL 分布、音色バランスを正確に予測ができ、Autofilterやゾーニンググループの同期により、タイトなスケジュール下でも予測可能で再現性の高い結果が得られました。

最初の音から最後の拍手まで、一貫した感動

トラックを開けてから本番用のキャリブレーション完了まで、わずか3時間。これはシステム設計の効率性と、スタッフによるワークフローへの熟知の両方を物語っています。ツアー期間中、システムは一度も落ちることなく稼働し、すべての会場で安定したFOHリファレンスと一貫したショーのクオリティを維持しました。 アーティスト、バンドメンバー、技術スタッフからは、ミックスの明瞭さやステレオイメージの正確さ、そして低域のコントロールと迫力を高く評価しています。ミュージシャンはインイヤーモニターの快適さを実感しており、観客もどの会場でも均一で没入感のあるサウンドを体験できたとのとこです。

ツアーを振り返り、プリッソン氏次のように語りました。「大事なのは、柔軟であること、耳を信じること、システムエンジニアと密に連携すること。そして何より、低域の制御を甘く見てはいけない。最後に、自分が本当に理解し、自信を持てるシステムを選ぶこと。ツアーではそれがすべてを左右します。」

右図:FOHエンジニアのステファン・プリッソン
左図:プリッソン氏とダヴィッド・アリデー