2024年2月
ドイツ・ベルリンのミッテ区にあるフリードリヒシュタット・パラスト(Friedrichstadt-Palast)は、1,900人の収容力と、3,000㎡の、世界最大級の舞台を誇ります。この記録的な舞台を取り囲んでいるのは、幅24mの、ヨーロッパ最大のプロセニアムアーチです。100年以上前からベルリンのパラストは、100人以上の出演者と音楽、舞踊、アクロバットを特徴とする公演を通じて観光客と地元住民を魅了してきました。シルクドソレイユからパラストのために考えられたオリジナル作品まで、この舞台で上演されるパフォーマンスはフリードリヒシュタット・パラストのスケールに引けを取らない素晴らしいものばかりです。週に最大8回の公演を行い、年間50万人以上の来場者数を記録するパラストは、ベルリンで最も重要な劇場になっています。

1867年にオープンした後、フリードリヒシュタット・パラストは1873年にサーカス劇場に改装されました。基礎に問題が見つかった1980年に閉館し、4年後にヨーロッパ最大かつ最もモダンな芸術劇場として再びオープンしました。劇場専属のバレエ団、バンド、ユース・アンサンブルに加え、子供向けショー、フェスティバル・ガラ、ゲスト・パフォーマンスなど、ラスベガスの複雑なショーに匹敵できるほどの息を吞み込むようなパフォーマンスを提供しています。世界中の観客を集めるフリードリヒシュタット・パラストは、常にエンターテインメント・テクノロジーの最先端を行くよう努めています。この使命から、チームは、パラストがますます多様な催しを提供し、観客の体験を高めるイマーシブ・サウンド・テクノロジーを探し求めることになりました。

図:Friedrichstadt-Palastの外観

L-Acoustics公認プロバイダーであるFeedBack Show Systemが、フリードリヒシュタット・パラストのためのソリューションの監修を担当しました。システムは環境に関する劇場の厳格な制限を守りながら、既存のオーディオコントロールとシームレスに統合しなければなりませんでした。市場に存在するトラッキング・ソリューションへ対応し、会場全体に渡って包括的なオーディオ・カバレッジを提供しながら、ファンが複雑な演目のパフォーマーの位置をより明確に把握できるためにオーディエンスをイマーシブサウンドで包み込むことでした。FeedBack Show Systemのオーディオ担当であるデニス・ダックヴァイラー(Dennis Dackweiler)氏はL-Acousticsシステムをいくつかデザインした経験がありますが、ステレオからL-ISAへの変更に関しては、「目から鱗でした」と評します。「より広い空間ではっきりした分離ができて、まさに会場で目指していた結果になっています。巨大なサウンドスケープで観客をパフォーマンスに没入させることができるようになりました。」

ダックヴァイラー氏とFeedBackらは、L-Acousticsのマーティン・ローデ(Martin Rode)とマーティン・ヴルムネスト(Martin Wurmnest)と協力しL-ISA構成を設計しました。ローデはパラストとFeedBackのチームとの連携のすばらしさに特に感銘を受けたそうです。「スピーカー配置に関するプロダクション・ミーティングでは、舞台美術チーム、照明チーム、アート・ディレクターの全員が、L-ISAテクノロジーの最適なパフォーマンスを確保するために折り合いをつけることに全力で取り組みました。」

270度の広いオーディエンスエリアには独特の課題があり、完璧なカバレッジの提供ができる最適なスピーカー配置を決めるためにSoundvision 3Dマッピングソフトウェアを用いました。「我々の目標はダイナミックな分布と舞台上のアーティストの正確な定位を確保することでした。L-Acoustics K3によるL-ISA構成が、バランスの取れた、卓越したサウンドを提供する理的なソリューションとなりました。」とフリードリヒシュタット・パラストのテクニカル・ディレクターのトーマス・ヘルダ(Thomas Herda)氏は説明します。

図:システムの様子

L-ISAシーンシステムは102台のL-Acoustics K3で構成されました。15ハングのうち、9つがステージ幅をより広く均等に配置され、6つがサラウンドとして会場の左右に配置されました。2台のX12がK3拡張システムの下で拡張フロントフィルとして機能します。A15 FocusA15 Wide1台ずつによる2つのアレイがアウトフィルとして機能します。空間音響処理は、64出力のL-ISA Processor IIで行われます。

L-Acoustics X85XTコアキシャルスピーカーとSyva Subによる小規模なL-ISA構成が、劇場のオンサイトスタジオに設置され、イマーシブ・オーディオ・ミキシングのプリプロダクションに利用されます。これにより、サウンドデザインチームと音楽部門は前のショーがまだ上演されている間、会場を使うことなくプリプロダクションを行うことができました。「2022年の頭、スタジオでのミキシング・セッション中にスケール・シミュレーションを実行し、クリエイティブなアイデアが大きな会場にうまく再現されることを検証しました。見事に成功しました。本番会場に移っても、EQレベルの微調整だけで済みましたし、シミュレーションしたオブジェクトの位置はすべて、巨大なステージに完璧に反映されました。」とヴルムネストは熱く語ります。

「我々にとってL-Acousticsが理想の選択でした。優れた音質に加えて、L-ISAの空間オーディオが提供する音響定位により、舞台上の視覚的な動きと音響の体験を一体化させることができました。観客は舞台上のミュージシャンや出演者がどこにいるかを正確に耳で判明できるようになり、テンションの上がる、生き生きした体験を味わえるようになりました。我々が夢見てきた音の風景に命を吹き込んでもらいました!」とヘルダ氏は締めくくります。


「フリードリヒシュタット・パラストをパートナーに迎えることが大変喜ばしいことです。」とL-Acousticsセールスマネージャーのセバスティアン・ウィットロック(Sebastian Wittrock)は語ります。「このプロジェクトに貢献できたことを誇りに思います。ベルリンのパラストは、L-Acousticsの国際的リファレンスのひとつとなり、彼らからいただいた信頼と協力に感謝しています。」