2019年6月

世界中で実施される『The Voice』というタレントショーは、現在南アフリカでその第3シーズンを迎え、かつてないほど人気を博しています。ヨハネスブルグのフェアランドにあるMosaiek Teatroから放送され、DStv 101のM-Netで放映された「ライブショー」の局面に入ったばかりです。L-AcousticsのL-ISA Hyperreal SoundテクノロジとDiGiCoミキシングコンソールのおかげで、今年のテレビ番組の中で、このエキサイティングなショーは、スタジオの視聴者にまったく新しいオーディオ体験を提供します。

ショーのシステムを提供したMulti-Mediaは、4年前に人気のある歌唱コンペティションが南アフリカでヒットを記録して以来、『The Voice』と仕事をしてきました。この期間、会社は成長し、ライブイベントの仕事が増えました。今年の初めには、最初に30台のL-Acoustics Kara、12台のSB18、4台のKS28と7台のLA12Xアンプコントローラを購入し、Mosaiek Teatroで L-ISAを構成するのために、さらに18台のKara、4台のSB18と5台のLA12Xを追加しました。

仕事を始めたばかりの頃に、Multi-MediaオーディオエンジニアのAdriaan van der Walt氏は、ステレオシステムで自然なサウンドミックスを作成しようとする際の限界を認識していました。彼は、人間の聴覚による音の知覚をより正確に表現するためにテクノロジの発展に興味を持つようになりました。

Van der Walt氏とDWRのChris Pugh氏は、4日間の広範囲なL-ISAトレーニングセッションのためにパリ近郊にあるL-Acoustics本社に行きました。「非常に有益な情報が山ほどあって大変でしたが、L-Acousticsのフレンドリーで心地良い雰囲気のおかげで私にとって特別な経験となりました」とPugh氏は言います。「実は、私は15年間L-Acousticsを訪問することを夢見ていましたので、Adriaanさんと私はその時間を満喫しました。南アフリカに戻ってプロジェクトを始めることを待ちきれませんでした。」

Mosaiek Teatroで、シーンシステムはステージの全幅にわたって配置された9台のKaraによる5つのアレイで構成されています。KS28サブウーハーは中央にフライングされ、会場全体にシームレスなカバレッジを提供します。拡張システムとして、各側に6台のKiva IIがオーディオ体験のパノラマを広げます。フロントフィルは2台のX12で構成されています。また、広い会場を完璧にカバーするために、片側あたり2台のARCS WiFoによるアウトフィルが追加されました。ステージモニタリングとして、Multi-MediaのSimon Panos氏は、照明グリッドに搭載された2台のX12と、ステージの側面に配置された2台のX12を使用しました。

コントロールは最新のファームウェアを実行しているDiGiCo SD10を介して行われます。「DiGiCoにはコンソールをL-ISAと結び付けるいくつかの新機能があります」とvan der Walt氏は言います。「SDシリーズの設定の可能性は素晴らしいです。設定して、たった3つのボタンを押すだけで、その他の必要な作業に集中することができます。もちろん、それをすべてレイアウトしてプログラムするには少し時間がかかりますが、いったんその操作モードに入ったら、仕事が本当に楽になります。」


DiGiCoシステムは、Waves Multi-Rack、L-ISAコントローラ、Multitrack Recordingと、Optocoreバックボーンを統合しています。「バックグラウンドで行わなければならないルーティングとインサートパッチがたくさんありました」と説明します。「最初のOptocoreループは、ほぼ最大限に達しました。500のうち40のオーディオパスしか残っていません。」

Van der Walt氏によれば、SD10は彼自身の分身であり、コンソールのレイアウトは彼の思考プロセスとかなり近いようです。「本当に素晴らしいです。レイアウトした後は、目的をかなえるためにそれ以上さわる必要がなく、思い通りになっているわけです。とても簡単で直感的な使い方ができます。」

Voiceは複雑で忙しいショーで、パフォーマンスの間隔は15秒しかないこともありますが、van der Walt氏にとって、それは問題になりません。「SD10のスナップショットだけでコンソール全体にわたってフェーダーバンクをリコールする方法は、本当に素晴らしいです。私たちはこのショーを何回もリハーサルしたので、スナップショットをリコールしてライブ放送中に微調整を追加するだけで済みます。」

Van der Walt氏によると、オーディオシステムの設定方法には慣れていますが、ミキシングへのアプローチは全く新しいとのことです。「この経験では学んだことを捨て去って、新しい方法を勉強しなければなりません。あなたの創造的な感覚は、L-ISAを使用するとさらに価値が高まります。それにより音楽を自由に解釈することができ、エレメントを空間的に好きなところに位置づけることができます。これによるミックスへの影響は信じられないほどすごいです。可能性は無限大です。」

最初のサウンドチェックに至るまでの数週間、van der Walt氏は何回も夜更かしをして、空間配置やルームエンジンの構成などを考えていたと言います。

「『The Voice』で取ったアプローチは、タレントの歌唱力を引き立てサポートできるポケットをミックスの中に作成することです」とvan der Walt氏は説明します。「通常のやり方では、私はサブグループを利用しています。ドラムにより豊かなサウンドを与えるためにパラレルコンプレッション、またはギターやキーボードのためにグループのサイドチェーンコンプレッションを使うかのどちらかです。もちろん、ボーカルに存在感を与える十分なスペースを確保するために、これらのグループのミックスの際に、ある程度の妥協がありました。

「従来の方法と比べて、コンソールの使い方が違って、望む分離を得るためにコンソールでやることが少なくなったことに気づきました。ほとんどのものがL-ISAテクノロジによって行われるので、追加のスペースと、今までになかったトーンの分離が得られます。それ以前はEQやダイナミクス、そしてグループでものを重ね合わせることで常に焦っていましたが、今はクリエイティブにミックスできるようになりました。ギターやキーボードで細かいニュアンスを失うことなく、ボーカルをミックスに押し戻しても明確に聴こえます。イマーシブ環境内の各オブジェクトには、より高い解像度と奥行きがあり、ルームが広くなったように感じます。」

さまざまなブランドやさまざまなテクノロジの組み合わせにより、システムは期待を大幅に超えました。

「L-ISAという新技術は、サウンドの未来であると私たちは信じています」とvan der Walt氏は加えて述べます。「それは本当に観客を魅了します。ついに、スピーカーを使ってシーンを作成することができるようになりました。すべての96個のオブジェクトをその空間内のほぼどこにでも配置できるので、楽器のサウンドとソースの位置を一致させることができます。ボーカリストがステージの上を行ったり来たりする場合は、ボーカルを移動してアーティストをフォローすることができます。システムは観ているものと聴いているものを一体化させます。従って、アーティストの位置が正確にわかります。」

南アフリカの『Entertainment Technology』誌との最近のインタビューで、ファイナリストのAnslin Gysmanは次のようにコメントしています。「これは南アフリカと『The Voice』にとって史上初のことではありますので、今シーズンのショーは参加者たちにとって滅多にない、素晴らしい機会になります。私たちはさまざまなサウンドシステムに慣れてきましたが、L-ISAは私たちの声の能力を披露し、オーディエンスにもっと爽快で感情的、そして個人的な体験を提供する素敵な機会を与えてくれるでしょう。」