リバーサイド・ミュニシパル・オーディトリアム / 写真提供:Heather Koepp

2025年5月
南カリフォルニアの歴史ある2つの会場、リバーサイド・ミュニシパル・オーディトリアムとフォックス・パフォーミング・アーツ・センターは、2024年末にそれぞれの常設音響システムを同時にアップグレードし、ほぼ同一のL-Acoustics Lシリーズ・システムを導入しました。Eighth Day Sound(Clair Global グループ)が供給したL2/L2Dシステムは、Clair Global、L-Acoustics、そして両会場を管理・運営するLive Nationのチームメンバーによって設置されました。

ロサンゼルス中心部から東へ約80キロメートルのリバーサイド市内にあり、互いに3ブロック離れて位置するこの2つの施設は、元々わずか2か月の差で開館しました。リバーサイド・ミュニシパル・オーディトリアム(RMA)は、リバーサイド郡の第一次世界大戦従軍者を追悼する記念碑的意味も併せ持つ、ミッション・リバイバル様式の建物で、1928年11月に開館しました。フォックス・パフォーミング・アーツ・センター(フォックス)は、スパニッシュ・コロニアル・リバイバル様式で建設され、そのわずか2か月後の1929年1月に開館しました。両劇場は最後に建物の改修と音響システムの更新を行ったのは約15年前であり、それはLive Nationが両会場の運営を引き継ぐ数年前のことでした。

「私の本業はサウンドエンジニアではありませんが、L-Acousticsのサウンドがずっと好きでした。」と、リバーサイド・ミュニシパル・オーディトリアムとフォックス・パフォーミング・アーツ・センターの会場制作ディレクター、ブレンドン・デイヴィス(Brendon Davis)氏は説明します。「私がキャリアをスタートさせたクラブには、Rat Soundが設置したL-Acousticsのシステムが入っていて、いつも満足させてくれました。」デイヴィス氏は続けます。「約3年前にリバーサイドに移り、サウンドシステムの検討し始めたとき、両方の会場で同じシステムが必要だとすぐに思いました。私たちは複数の場所で同じスタッフが働いているので、同一のシステムを持つことで、オーディオエンジニアにとって運用が大幅に効率化されます。」

RMAのLシリーズ・リグで演奏するグレントペレス / 写真提供:Heather Koepp

Clair Globalのグローバルセールス担当ジェイソン・ヴローベル(Jason Vrobel)氏によれば、Lシリーズ導入のリクエストはデイヴィス氏からだったとのことです。「その時点で、L-Acousticsのツアリングシステム・アプリケーションエンジニアであるヴィック・ワグナー(Vic Wagner)氏と、当社チームのデザインエンジニアであるC.W.アルカイア(C.W. Alkire)氏が現地調査を行い、それぞれの会場に必要な設計と要件をまとめました。」ヴローベル氏によると、これらはClair GlobalがLive Nationの会場に設置した最初のLシリーズシステムだそうです。

両会場には、それぞれの建築的要件に合わせてカスタマイズされたL-Acoustics L2/L2Dシステムが導入されています。1600席の伝統的な劇場であるフォックスでは、メインハングに片側2台のL2と1台のL2D、センターハングに1台のL2Dを配置し、さらに片側3台のKS21iサブウーハーを設置しています。1,400席のRMAは、よりコンパクトな構成で、片側1台のL2と1台のL2D、センターハングにL2Dを配置し、さらに片側4台の床置きKS28サブウーハーを設置しています。両会場のシステムには、全席エリアをカバーするために配置されたフィルスピーカー(X8X8iA10 Focus)も含まれています。フォックスは8台のLA7.16iと1台のLA12Xアンプリファイド・コントローラーでドライブされ、RMAは5台のLA7.16i、2台のLA12X、3台のLA4Xユニットでドライブされています。両会場とも、今後開催される多彩な公演に対応できる体制が整っており、フォックスでは神韻(シェンユン)、アル・ヤンコビック、エンゲルベルト・フンパーディンクらが出演し、RMAでは今後数ヶ月以内にザ・マーズ・ヴォルタ、レス・ザン・ジェイク、ダンス・ギャビン・ダンスらが出演する予定です。

「ここ2年半でおそらく35会場のLive Nation会場を手がけてきましたが、できる限り統一性を保つようにしています。ゲストエンジニアやシステムエンジニアがどの会場に来ても、前回訪れたLive Nation会場と同じシステムを扱えるようにするためです。」とヴローベル氏は説明します。フォックスとRMAの場合は、機材の統一性はFOHとモニターコンソールにまで及んでいます。RMAでは既存のDiGiCo SD12に加え、3台のSD12とそれぞれにSD-Rackを導入し、古いミキシングデスク3台を置き換えました。

RMAの新しいDiGiCo SD12 FOHミキシングコンソールと、背景に映る
L-Acoustics L2/L2Dアレイ / 写真提供:Heather Koepp

デストロイ・ロンリーがRMAのLシリーズと KS28で観客を魅了
写真提供:Heather Koepp

ヴローベル氏はさらに、「一部の会場では、ツアーパッケージにできるだけ近い形で設置しています。もし会場でアンプラックが故障するなど、何らかのトラブルが発生した場合でも、ツアー用の機材から交換品を送り、翌日には復旧させることができます。」と述べています。

「このプロジェクトは私たちのスタッフが管理したため、会場の構造や機材の設置方法を熟知しています。」とデイヴィス氏は断言します。「もし何かトラブルがあっても、自分たちで対応することができます。」

デイヴィス氏によると、新しいL-Acousticsシステムは、2つの劇場の観客に音響の向上をもたらしただけでなく、アーティスト側にも魅力的な機材環境として認識され、ツアースケジュールに両会場を組み込みたいという関心も高めたとのことです。「ソーシャル・ディストーションがRMAで最後に演奏したのは2014年で、もう二度と見ることはないと思っていたバンドでした。」と彼は語ります。「タレントチームに、『もし大晦日までにこの新しいシステムを設置したら、彼らは公演してくれるだろうか?』と尋ねたところ、『設置予定の機材リストを送って欲しい』と言われ、ソーシャル・ディストーションはすぐに公演を承諾しました。大晦日に演奏してくれ、素晴らしい体験でした。」

MAでのラブクライムズのライブ、ステージ上に設置されたセンターL2D
写真提供:Oscar Rodriguez

ソーシャル・ディストーションの大晦日公演で、RMAのミラーボールがセンターL2Dハングを覆う / 写真提供:Oscar Rodriguez

RMAで演奏するソーシャル・ディストーション、L-Acoustics A15/KS21サイドフィルおよびX8フロントフィルが見える
写真提供:Oscar Rodriguez