Photo Credit: Amele Sakpo

A15iによるスピーカー・システムとステージ用KLANG IEMミキシング・ソリューションとの組み合わせは、教会内のオーディオ・インフラ全体の改修の要となるものです。

2022年9月
時には、奇跡を起こさなければならないこともあるのです。オハイオ州シンシナティ北部の郊外ハミルトンにあるプリンストン・パイク教会は、1928年に設立され、その礼拝スペースは年々拡大し続けています。しかし、2001年に約3,000席ある新しい聖堂がオープンしたとき、その新しいSRシステムが教会の成長に追いついていけないことが明らかになりました。 そこで今年、プリンストン・パイク教会は、全てのオーディオ設備の抜本的なアップグレードの一部として、メイン講堂にL-AcousticsによるL-ISAイマーシブサウンドテクノロジーを採用することを選択しました。

L-ISAの採用を決定することは簡単でした。大きな舞台と扇形客席エリア間の音響的、感情的なつながりを改善する没入型システムであることが強い理由でした。そして、この規模の会場でL-ISAセットアップのコストが従来のステレオサウンドシステムのコストとほぼ同等であったことが、その決断を大いに後押ししました。しかし、プリンストン・パイク教会がイマーシブに移行した最大の理由は、単純に時間だったのです。

「私たちが交換したシステムは21年前に導入されたもので、次の20年を見据えた先進的なもの、つまり試作的なテクノロジーではなく、実績ある最先端のものが欲しかったのです。それをL-Acousticsが提供することができました。」とプリンストン・パイク教会の制作ディレクター、エリック・チャンシー(Eric Chancey)氏は話します。「私たちは、後で振り返って船に乗り遅れたと思いたくありませんでした。L-ISAをベースにした設計と一般的的なL-Rステレオシステムとのコストの差はわずかでした。教会の役員会は、この数字を見て、これからは教会の音響はこうなるのだと理解しました。数年後に、なぜこれをやらなかったのだろうという悔しい思いをしたくなかったのです。」

L-Acousticsのシステムを構築したセントルイスのLogic SystemsのAVシステム施工部門であるCignal Systemsのオーナー兼CEOであるチップ・セルフ(Chip Self)氏は、教会の役員会にいくつかの選択肢を提示しました。その中にはL-ISA構成のスピーカーを導入して従来のステレオで使用し、後から没入型システムを導入するという提案も含まれました。「しかし、教会は初めからイマーシブ構成を導入することに賛成してくれるだろうという予感がありました。」と彼は言います。「結局そうなりましたが、彼らにとって素晴らしい結果をもたらしました。」

今年初めに設置された教会の新しいサウンドセットアップは7つのシーン・アレイで構成されており、中央の5つはそれぞれ3台のA15i Focusの下に1台のA15i Wideで構成されています。その両端の左右2つのシーン・アレイは、より小さな1台のA10i Wideの上に3台のA10i Focusで構成されています。さらに2台のA10i Wideの上に1台のA10i Focusの拡張アレイがフライングされています。A15iとA10iのシステムはすべて、カスタムで設計・製作されたLogic Systemsのエクソスケルトン・プレートシステムを使用しています。

Photo Credit: Amele Sakpo

その他のスピーカー・システムは、2台のA15i Focusと2台のA15i Wideによる左右アウトフィルアレイ、ステージリップに並べて配置された13台の超小型5XTコアキシャルによるフロントフィル、5台のX12ステージウェッジ、12台のKS21iフライングサブウーハー、12台のLA4Xと7台のLA2Xiアンプリファイド・コントローラーを含みます。このシステムは、教会の比較的小規模なプロダクションのニーズに最もマッチし、没入型システムへの参入コストを大幅に削減するために、16出力の標準ライセンスレベルで購入された最新のL-ISA Processor IIを介してMilan-AVBですべて制御されています。LS10スイッチも随所で使用されています。

このシステムのほかに、教会のジムシステム(A15i Wide x 6台、SB28サブウーハー x 2台、LA12X x 1台)、ユースセンターシステム(A15i Wide x 6台、LA2Xi x 2台)、チャペルシステム(X12 x 2台、LA2Xi x 1台)、合唱室システム(Syva x 2台、Syva Low x 2台、LA4X x 1台)といった音響システムも導入されています。

ステージ上では、一対のKLANG:vokal 3Dインイヤーモニターミックスプロセッサーが、KLANG:kontrollers経由で48 kHzと96 kHzで最大24個の個別のミックスをワイヤレスIEMモニターに提供しています。「これは没入型サウンドへの大きな飛躍でした。」とセルフ氏は語ります。「L-ISAコントロールのPAシステムだけでなく、KLANG 3Dモニターシステムも同様です。一つのシステムで没入型に移行することは、特に礼拝堂にとっては大きな仕事ですが、2つものシステムでそれを行うことは本当に大きな挑戦です。 彼らはモノラルから最先端のサウンドに移行しました。しかし、彼らはイマーシブオーディオが教会にとって進むべき道であることも理解しています。」

セルフ氏は、教会のためにL-ISA/Klangシステムのトレーニングに時間をかけていると言います。「教会にとって大きな技術的変化なので、トレーニングはじっくりと進めています。技術スタッフがこの新しい挑戦を気に入っていることも分かっています。」と語ります。「ある面ではより複雑ですが、別の面では、特定のものにEQを割り当てるなど、サウンドの要素に配慮をする必要がないことに気付いているようです。L-ISAでは、秩序があります。その結果、ボランティアの人たちもミキシングがしやすくなったと感じています。EQやダイナミクスの使用を大幅に減らし、サウンドに息吹を与えることができるようになったのです。」

チャンシー氏によれば、L-ISAがプリンストン・パイク教会を未来への道に導いただけでなく、教会の物理的なニーズにもすべて合致しているとのことです。「舞台が大きく、客席エリアも広いのですが、L-ISAはそれらの空間内で音を定位させるのに役立っています。」と説明します。「KLANGモニタリングの使用についても同じことが言えます。このような環境でミキシングできるようになると、従来のステレオサウンドに戻るのは難しいですね。イマーシブ・サウンドに踏み込むことに少し不安を感じていましたが、実際に体験してみると、L-ISA のおかげで確信を持てるようになりました。」

Photo Credit: Amele Sakpo

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