写真Ⓒ Amy Pinard

Diversified、MLSのNY Red Bullsのスタジアムに耐候性に優れたのHi-Fiサウンドシステムを提供

2022年4月
2010年3月にオープンした25,000人収容のレッドブル・アリーナは、メジャーリーグサッカー(MLS)のニューヨーク・レッドブルズと全米女子サッカーリーグのNJ/NYゴッサムFCのホームスタジアムです。マンハッタンからハドソン川を渡ってすぐ、ニュージャージー州ハリソンにあるこのスタジアムは、米国およびリーグで3番目に大きいサッカー専用スタジアムです。また、軽量・コンパクトなA15iエンクロージャーとSB18 IIiサブウーハーからなるL-Acoustics Aシリーズ スピーカー システムにより、世界最高水準のサウンドを実現しています。2月26日の2022年MLSシーズンキックオフを前に設置されたこのシステムは、世界有数のテクノロジーソリューションプロバイダーであるDiversified社が設計・施工を担当しました。

Aシリーズスピーカーは、オープン当初にキャットウォーク周辺に設置された分散型サウンドシステムに代わるものです。「当時、アメリカではサッカーがプロリーグとして確立されつつあり、サウンドシステムは価格を重視して設計される傾向にありました。」とDiversified のスポーツ・ライブイベント担当映像音響ディレクタのフースト・グティエレス(Justo Gutierrez)氏は説明します。「また、一般的にサッカーの試合は連続して行われるため、PAシステムはあまり使われず、主に試合前後やハーフタイムのアナウンスに活用されることが多かったですね。しかし、アメリカではサッカーが進歩し、今では音楽も含め、より多くのことをサポートできるサウンドが求められています。」

グティエレス氏によると、レッドブル・アリーナは、より高い出力と客席を完全にカバーできる高性能でインパクトのあるサウンドシステムを求めていたそうです。それは、AシリーズのエンクロージャーとSB18 IIiサブウーハーを左右対称に配置し、さらにA15i Focusでコーナーフィルアレイを2つ配置することで達成できました。この設計により、客席間の音の重なりがシームレスになり、客席の「部分々々」にしか焦点を当てられない分散型スピーカーよりも、はるかに一貫したスムーズなカバレッジを実現できました。

約3万平米を持つMLSのスタジアムの中で最大の屋根は、客席の最後列からフィールドのタッチラインの先端まで36.5メートルあり、その長さの半分で自然光が全席を覆うように半透明になっています。これは、観客の騒音を増幅してフィールドに反射させることで優れた音響効果を発揮することで知られるロールーフ設計になっています。しかし、Aシリーズが持つ高い指向性により、新しいサウンドシステムは全く影響をあたえません。

「新しいスピーカーは上段と下段の客席の間に等距離に配置され、屋根の影響を受けない最適な角度で設置され、反射を最小限に抑えています。」と、システム設置時にレッドブルアリーナ建設ディレクターのジョン・アモロサ(John Amorosa)氏と密に協力したグティエレス氏は語ります。旧システムのケーブルインフラを活用することで、設置費用を大幅に削減する新システムは、スピーチの明瞭度と音楽の迫力を高めることに特化した設計になっています。スタジアムの音響が大幅に改善されるだけでなく、ツアーで持ち込まれるシステムと組み合わせて、音楽パフォーマンスの補助的なディレイとして使用できるようになり、スタジアムの魅力を高めることにも貢献しています。「それは今、ツアーショーを誘致するための大きな要因になっています。 」

L-Acousticsは、2018年からDiversified社と、アモロサ氏とAVエンジニアのジョン・ニクラス(John Nicklas)氏が率いるレッドブルアリーナプロジェクトチームと密接に協力して、システム設計に取り組みました。パンデミックにより2020年までスポーツができなくなる中、彼らは連絡を取り合い、デザインを改良し続けました。「コロナウイルス感染拡大によるロックダウンはプロジェクトを大幅に遅らせましたが、レッドブルズのチームは、パンデミック中にMLSが被った巨額の財政赤字にもかかわらず、プロジェクトを予定通り、予算内に収めることに全力を尽くしました。」と、L-Acousticsビジネス開発マネージャー、スポーツ施設アメリカ・カナダ担当のダン・パルマー(Dan Palmer)は語ります。

今回導入したシステムは、主に96台のA15i Focusで構成されており、必要に応じて12台のA15i Wideエンクロージャーで垂直方向のカバレッジを増やすことができます。北、南、東の各ゾーンに7台のA15iによる4つのアレイと、西ゾーンに6台のA15iによる4つのアレイを配置し、それぞれに3台のSB18 IIiを組み合わせてLFインパクトを高める設計になりました。北西と南西のコーナーにそれぞれ2台のA15i Focusを配置した小型のコーナーフィルアレイを使用してボウルシステムを完成させ、観客のリスニングエリアを完全にカバーし均一なSPL分布を確保します。

このシステムは、15台のアンプリファイド・コントローラー(LA12X 14台とLA4X 1台)でドライブとコントロールされ、会場のスチール製のひさしからフライングされ、Diversified社が作成したカスタムリギング設計を使用して、J字の形をしたPTFEグラスファイバー製テンションファブリックで覆われました。A15iとSB18 IIiの組み合わせは、フルレンジでインパクトのある性能をバランスよく実現しています。A15iは41Hzまで伸び、SB18 IIiと並んでLFレスポンスを32Hzまで伸ばし、しかもコンパクトな外観と会場のひさしの荷重条件を満たす軽量性を維持しています。
L-Acousticsのジノ・ペリカノ(Gino Pellicano)は、Diversified社およびレッドブルアリーナの管理者と連携してシステムのキャリブレーションを行いました。

また、IP規格(IEC 60 529 – IP55、MIL-STD-810G、ISO 105-B01 – UV保護)にも対応しており、アメリカ東北部の屋外会場には欠かせない耐候性を備えています。その保護は、密閉されたコネクタプレート、グランドナット、および専門家や大学の屋外スタジアム設置の厳しい要求を満たすための耐久性の高いハードウェアを使用して、システムの適合と仕上げにまで及びます。

この新しいL-Acoustics A15iサウンドシステムは、DiGiCo Quantum225ミキシングコンソールとDanteネイティブの新しいDQ-RackをFOHに設置するなど、幅広いサウンドアップグレードの一環として、レッドブルズと他の会場関係者に今後何年にもわたって貢献してくれることでしょう。

レッドブル・アリーナAVエンジニアのジョン・ニクラス氏は、「カバレッジの均一性、サウンドの音楽性とインパクトの強さに、我々はとても満足しています。」と語っています。「Soundvisionのモデルは印象的で正確でしたし、L-Acousticsは物流上の問題にもかかわらず、納期を守るために最大限の努力を払ってくれました。L-AcousticsとDiversified社の両社は、並外れたサービスと細かい配慮を提供してくれました。彼らが納入したPAは、我々にとって全く画期的なものであり、ここレッドブル・アリーナでスポーツファンに新しい音響体験を提供することを楽しみにしています。」

Diversified社は、新しいL-AcousticsのPAシステムの設計と設置を行いました。写真Ⓒ Amy Pinard

メインボールシテムはA15iアレイとSB18 IIiサブウーハーで構成されています。写真Ⓒ Amy Pinard

L-Acousticsのシステムは、John Nicklas氏曰く「完全にゲームチェンジャー」です。写真Ⓒ Amy Pinard

PAは、ファンにとってより明瞭なスピーチと音楽のインパクトを提供します。写真Ⓒ Amy Pinard

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