20ゾーン、干渉ゼロ:L-Acoustics LシリーズがchangeNOWイベントでマルチステージ音響の課題を解決
Fleikは、Noveltyが提供するLシリーズL2とKivaIIを導入し、パリの複雑なサステナビリティ・サミットでの同時運用を実現
2025年7月
ヨーロッパ最大級のサステナビリティ・サミット「changeNOW」は、音響エンジニアにとって最大の難題を提示しました。それは、パリの象徴的建築であり、同時に強い残響特性でも知られるグラン・パレで、20のパフォーマンスゾーンを同時に運用するという挑戦です。この3日間のイベントは、140か国から4万人の来場者を集め、国際会議とライブパフォーマンスを組み合わせたユニークな形式で開催されました。メインステージ6か所に加え、さらに14のパフォーマンスエリアがイベント全体を通じて同時に稼働し、ガラスドーム会場特有の大規模な音漏れ問題を引き起こしていました。過去の開催では、この干渉問題を解決するためにヘッドフォンシステムに依存していましたが、観客を「個別のオーディオバブル」に閉じ込めてしまい、会場全体の共有体験を妨げていました。今年、changeNOWとイベント代理店Moma Eventは、「ヘッドフォンを完全に排除して、20のゾーンすべてで最高品質のサウンドを維持する」という課題を、オーディオパートナーであるFleikに課しました。それは、従来のサウンド・リインフォースメントが、最も困難な音響環境を克服できることを証明する試みでもありました。

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Legacy Stage
技術的なハードルは高いものでした。「主な課題は2つありました。ひとつは6つのメインステージ間の干渉を抑えること、もうひとつはバルコニーでヘッドフォンではなく従来のスピーカーシステムを使用できるようにすることでした。」と、Fleikの共同創業者アントワーヌ・セコンディノ(Antoine Secondino)氏は説明します。
Fleikはシステム全体を置き換えるのではなく、段階的にコンセプトを検証していく体系的なアプローチを採用しました。「初日はコンセプトを検証するために、スピーカーシステムとヘッドフォンシステムを同時に稼働させました。」とセコンディノ氏は述べています。「その後、現場で調整を確認しながら、徐々にヘッドフォンを外し、従来の拡声方式に切り替えていきました。」

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Collective Stage

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Agora Stage
予測による精度の向上
Fleikのソリューションは、メインステージのLegacy StageにL-Acoustics L2システムを採用することでした。このステージでは、話し手が無指向性マイクを使用しました。Lシリーズは、スピーチと音楽の両方で明瞭な音を届ける能力を持ち、かつ隣接するゾーンやバックステージへの音漏れを抑制できる点から採用されました。チームはchangeNOWと、8か月にわたり計画と設計を進め、L-Acousticsの3Dオーディオモデリングソフトウェア「Soundvision」を用いて数十ものプランを作成・改良し、最終的な成果を導き出しました。
この規模で目標とするパフォーマンスを実現するには、高精度な予測モデリングが不可欠でした。SoundvisionはVectorworksやSketchUpといった3Dデザインツールと統合されており、現場に機材を搬入する前に、会場の複雑な建築構造に合わせて各システムを最適化することが可能でした。
「Soundvisionは不可欠でした。」と、Fleikの共同創業者ジェレミー・ココット(Jérémie Kokot)氏は語ります。「カバレッジパターン、SPL分布、干渉ゾーンを予測するのに役立ち、各システムのサイズと台数を精密に決定することができました。これはこのプロジェクトにおいて非常に重要だったのです。」

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Garden Stage

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Legacy Stage
戦略的なシステム構成
Legacy Stageは、LCR構成で音響の基軸を担いました。左右にL2/L2Dのデュアルハング、4台のKiva IIを用いたセンタークラスター、そしてKS21をカーディオイド構成でグラウンドスタックしました。Syva/Syva Lowペアでインフィルを補い、X8エンクロージャーがフロントフィルを担当。周囲の階段部分はKiva IIアレイでカバーしました。
Collective Stageは、片側9台のKiva II、センタークラスター、さらにカーディオイド構成のSB18デュアルスタックを配置し、ゾーン間の音響的な分離を確保しました。
Gallery Stageは、Syva/Syva Lowのペアをベースに、SB15mとSyva Subを追加。さらに独自のディレイソリューションとして、観客エリア周囲のライティングトーテムにSokaエンクロージャーを分散設置しました。
Agora Stageは、7台構成のKiva IIデュアルハングにアウトフィルアレイを組み合わせ、SB18による低域サポートを追加しました。
Garden Stageも、Syvaによるシステムを活用しました。SB15による補強と、戦略的に配置された4台のSokaをディレイカバレッジ用に導入しました。

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Gallery Stage

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Garden Stage
Bubble Stageは、バルコニーゾーン、ワークショップ、コミュニティスペースなど、複数の小規模パフォーマンスエリア(収容人数70〜220名)では、正確に配置されたX8システムと108Pモニターが使用されました。
LA12XおよびLA4Xのアンプリファイド・コントローラーとP1プロセッサーが全エリアをドライブし、すべての機材はL-Acoustics公認パートナーであるNoveltyから提供されました。
各ステージシステムは、ボイス、録音音源、ライブパフォーマンスといった多様なプログラムに対応しつつ、オーディオ干渉を最小限に抑え、フルレンジのカバレッジを維持するよう注意深く調整されました。Fleikは、ステージ間の干渉を最小限に抑えるために、ポイントソースよりも音を正確に方向づけることができるラインソースシステムを、設置全体で優先的に採用しました。

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Bubble Stage

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais: Gallery Stage

ChangeNOW 2025 @ Grand Palais : Fleik 共同設立者アントワーヌ・セコンディーノ氏とジェレミー・ココット氏
画期的な成果
「このプロジェクトの素晴らしさは、それが何を意味するかにあります。」セコンディノ氏は語ります。「私たちは単に音響のパズルを解いたのではありません。イベントの複雑さと音質の間で妥協する必要がないことを証明したのです。適切な機材と、限界に挑む勇気さえあれば、従来のサウンド強化は、最も要求の厳しい環境でも機能します。反応は満場一致でした。エンドクライアントも、プロダクションマネージャーも、結果に結果に驚嘆しました。」



























