ヒューストンのホビー・センターが、ブロードウェイツアーと常設公演のためにL-Acoustics K3コンサートサウンドシステムを導入
サロフィム・ホールのステージから見た2,650席のホール
2025年11月
2002年の開場以来、テキサス州ヒューストンのホビーセンター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ(Hobby Center for the Performing Arts)は、『ウィキッド』『ハミルトン』『レ・ミゼラブル』『ライオン・キング』『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』といったブロードウェイ屈指の大ヒット作を数多く上演してきました。そして今、センターの2,650席のサロフィム・ホールで上演される作品は、K3メインL/RハングとKara IIセンターアレイ、Aシリーズのディレイ、Xシリーズのフィルエンクロージャーを組み合わせた新しいL-Acousticsスピーカーシステムのおかげで、3層構造の会場のすべての座席を包括的にカバーし、これまで以上に素晴らしいサウンドを実現しています。
「この新システムは、ホビー・センターが掲げる芸術プログラムの拡充とインフラの開発・維持という目標を支えるものです。」と、ホビー・センターの運営・制作ディレクター、マイケル・メッツドルフ(Michael Metzdorf)氏は語ります。「これは、サロフィム・ホールの技術近代化のために過去1年間に取り組んできた数多くのプロジェクトの一つであり、サロフィム財団からの助成金によって実現しました。その結果には本当に感激しています。お客様は、オーケストラ席の最前列から上階ギャラリーの最後尾まで、スムーズで均一なカバレッジを体験でき、低音域もはっきりと感じられるようになりました。」


ブロードウェイとツアー公演に最適なサイジング
ホビー・センターでは、開場当初のホーン型スピーカーをすでにL-Acousticsの簡易的なシステムに入れ替えて運用してきましたが、近年のブロードウェイ公演やその他のツアー公演が求める高い音響基準を満たすには、さらなる強化が必要でした。そこで、適切な代替システムを設計するために、劇場・音響・エクスペリエンスデザインのグローバルコンサルティング企業であるCharcoalblue社と提携しました。「ホビー・センター側がL-Acoustics製品に精通していたことも、今回の設計を前進させる大きな要因となりました。」と、設計を主導したテキサスを拠点とするCharcoalblue のアソシエイトディレクター、ニック・コレア(Nick Correa)氏は語ります。「導入するモデルの選定にあたっては、多くの選択肢をシミュレーションしましたが、最終的にK3がこの空間に最適なサイズと性能を備えており、かつ予算にも合致すると判断しました。」
「メインアレイだけで可能な限りすべてをカバーしようとしがちですが、ここがツアーを開催する会場であることを忘れてはなりません。ブロードウェイの公演などは、独自のPAシステムを持ち込み、会場のフィル・システムだけを利用することも多いのです。新たに導入したライダー・フレンドリーなK3とKara IIのメインシステムは、ほとんどの公演ニーズを十分に満たすはずです。しかし、別のメインスピーカーを持ち込む公演があったとしても、単なる補助ではなく、それ自体で成立する堅牢なフィル・システムを用意したかったのです。」と続けて説明します。「必要に応じてメインシステムを撤去して保管できるよう、運搬用のカートやシャリオットも用意しました。」
効果的なサブウーハーの配置と包括的なカバレッジ
新しいシステムは、左右側に12台のK3エンクロージャー、中央には14台のKara IIをフライングした構成になっています。さらに、中央アレイの両脇には、計6台のKS21サブウーハーが 2:1のカーディオイド構成でフライングされています。コレア氏は、KS21サブをK3の背後に吊り下げてしまうと、K3メインアレイ2つをより前方へ移動させる必要があり、ボックス席からの視界を遮ってしまうと指摘しています。中央アレイの両脇に配置する手法は、会場全体に均一なカバレッジを提供するための最も効果的な方法であり、これは多くの「L-ISA」設計を模倣しているとのことです。また、「強力な低域が必要な場合に備えて、ステージ上に設置できるKS28サブウーハーも用意しました。」とコレア氏は説明します。さらに、ステージ上のモニタリング環境も充実しており、サイドフィル用のKara IIに加えて、X12やSB15サブウーハーなどが揃っています。
3つの階層、すべての座席を音で満たす
サロフィム・ホールは、オーケストラ席、メザニン席、ギャラリー席の3つの階層に加え、複数のプライベート・ボックス席を備えています。ギャラリーの最後列でもステージから約39メートルという距離です。コレア氏は、会場の全座席をカバーするため、従来のスピーカー配置をさらに拡張したフィル・システムを設計しました。「ホール内には音量が不足しているエリアがいくつかあり、そこに新たなフィルを追加しました。また、既存のスピーカー配置も変更しました。」と説明します。オーケストラ席の最前列の観客に向けて、8台のコンパクトな5XTをステージ前面に設置しています。メザニン席をカバーするためにギャラリー階の階下に8台のX8i同軸スピーカーを設置し、オーケストラ席の後方をカバーするためにメザニン階の階下に8台のX8iを設置しています。ギャラリー席の上層には、2台のA15i Focusと1台のA15i Wideを組み合わせた3つのフライングアレイでカバー。オーケストラ席のサイド用に片側1台ずつのX8iを、メザニン席のサイド用に片側1台ずつのA10i Wideを設置し、プライベート・ボックス専用として、片側3台ずつのX8iエンクロージャーでカバーしています。

左図:Charcoalblue社が設計を主導し、LD Systems社が施工を手掛けた新しいL-Acousticsスピーカーシステム。
右図:会場上手側に設置されたL-Acoustics K3アレイ。背景にはKara IIセンターアレイとKS21サブウーハーが見える。
LA7.16i アンプリファイド・コントローラーによる迅速な施工と個別制御
Clair Global傘下の LD Systems に所属するプロジェクト・エンジニア、AJ・マクグリン(AJ McGlynn)氏によると、本システムの施工のために会場がクローズされた期間は比較的短期間でした。「私たちは非常に限られたスケジュールの中でこのプロジェクトを完遂しました。ケーブルの敷設を含め、PAシステムの構築に費やせたのはわずか5週間です。メインのエンクロージャーはツアー仕様で素早く吊り込める設計のため容易でしたが、バルコニー下のスピーカー設置場所がすべて従来から変更されたため、工夫が必要でした。」
システム全体の駆動と信号処理は、フロア設置のサブウーハーとバルコニーのディレイ・スピーカーを除き、LA7.16i アンプリファイド・コントローラーで行われています。これ以外のスピーカーについては、LA12X アンプリファイド・コントローラーで駆動されており、アンプへの信号供給はFOHからMilan-AVBネットワークを介して行われます。「LA7.16iは素晴らしいアンプです。」とコレア氏は評価します。「16チャンネルのアンプを使用し、フィル・システムのスピーカーを可能な限り個別に配線することで、極めて高度な制御が可能になりました。ブロードウェイのツアー公演では、ギャラリー席のディレイを一括で制御できれば十分な場合もありますが、常設の劇場作品では個別の調整が求められることもあります。そのため、すべてのフィル・スピーカーを個別に増幅、適切にマトリックス処理ができるように設計しました。」
ツアー対応システムが常設公演とビジター公演に対応
「ホビー・センターは、ロックバンドからヒップホップアーティストまで、あらゆるジャンルに対応できる高品質なシステムを備えているため、ツアーアーティストもこの素晴らしいシステムを活用できます。」とマクグリン氏は語ります。「ビジターアーティストは、テクニカルライダーに記載されたL-Acousticsシステムを見て、自前のPAシステムをトラックに積んだままにしておけると理解するでしょう。FOHシステムは、アナログ、AES、Danteの各入力に対応し、AVB経由でL-Acousticsのシステムに信号を送ります。ステレオ構成やLCR構成など、プロダクションが求める希望の構成には、ホビー・センターのハウス・オーディオ・エンジニアであるダニー・ノードビー・Jr(Danny Nordby, Jr.)氏が、システム・プロセッサーのスナップショットを切り替えるだけで即座に対応可能です。」
また、新しいL-Acousticsのシステム設計は、同劇場を拠点に自社制作作品の上演を行う主要な常駐団体、「シアター・アンダー・ザ・スターズ(Theater Under the Stars – TUTS)」のニーズにも合致しています。「彼らは全米からデザイナーを招集しますが、常駐のサウンドデザイナーであるアンドリュー・ハーパー(Andrew Harper)氏がおり、私たちは設計プロセスの段階から彼と連携してきました。ハーパー氏からは機材選定や全体設計について貴重なフィードバックをもらいました。新しいL-Acousticsシステムが導入された今、ホビー・センターは今後何年にもわたって、アーティストと観客の双方を魅了し続けるだろうというのが、私たちの共通の意見です。」とコレア氏は締めくくります。

ヒューストン、ホビー・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ外観(写真提供:Leah Polkowske Photography)



























